会津;会津駒ケ岳
(あいづこまがたけ)
素泊まりの小屋泊。紅葉はきれいだったがもう少し早い時期がよい。

 H5年10月4-5日(月火)当日発 ;
 Member.計3名

 【コース】(=は乗り物、〜は歩き)
4日(月)
渋谷6:00=(銀座線)=浅草6:30-7:10=(東武鉄道¥2370)=会津高原駅10:19-45=(乗合タクシー)=桧枝岐(950m)11:30〜登山口(1060m)〜水場(1750m)14:10-30〜駒の小屋16:10(2060m)
5日(火)
駒の小屋(2060m) 5:40〜会津駒ヶ岳山頂(2132.4m)〜中門岳(2060m)6:50〜駒の小屋(2060m) 7:50-8:05〜大津岐峠(1940m)9:45-10:00〜キリンテ(1002m)12:45=(食事)=会津高原駅16:25-16:46=浅草駅19:53


 新潟のIさんから提案のあった今回の会津駒ケ岳だったが残念ながら不参加の連絡があり、三人で行くことになった。当初Iさんの連絡待ちで、日程も行程も白紙のままだった。こちらよりはるかに早く冬支度を始める会津、安心して行かれるタイムリミットは10月10日頃迄と聞いていたものだから、待てど暮らせど連絡のないIさんを気遣いつ、こちらの三人は早くも決行と決めていた。あらかじめウォ−ミングアップをしておこうと事前に石老山に登って足慣らしをし、準備の為の打ち合せもその翌日の9月30日に、映画観賞(「逃亡者」ハリソン=フォ−ド)を兼ねて済ませた。

 ところがその日帰宅すると無常にもIさんから不参加というはがきが届いていた。さっきまで打ち合せしていた事が即具体的なものとなった訳だ。その時点で日程がはっきり決まり、プランも改めて作成し始めた。打ち合せが現実になり、あと数日という限られた日程の中で忙しなかったが、そんな中コ−ス時間に厳しいものを感じて少し予定を変更した。この点、ぎりぎり迄予定を立てられなかった事が悔やまれたが仕方がない。登りから下りまで二日目にしていたが、無理なく登る事を最優先に考えて、山頂で一泊し、登りと下りを両日に分けることにした。それのデメリットは食料の問題だった。しかし一日目の出発が早くなるものの、帰りの時間も早くなって楽になり、疲労度も二日間に配分されることになる。一日で登って下りるという充足感には欠けるけれど、又次の日通常の生活に戻ることを考えれば妥当だったと判断。温泉に入れなかったのは残念だったが。

 一泊の山行は六月の伊豆天城山と、尾瀬以来だった。色々な山に登りたいと思いつつ、中々そうできないのはやはり生活があるためで、そんな中こうして行ける事に感謝しなくてはいけない。だけど本音をいえばもっともっと行きたい…。そんな気持ちをもっているから一回の山が、生き生きと私に迫ってくる。  

 目的地に着くまでの車中はとってもわくわくする。登ろうとする山に気持ちが翔び、重い荷物を気にしながらも登れば登れてしまうという、今迄にも何回も味わってきた感慨が何とはなしに私達に自信めいたものを感じさせてくれる。そう思いつつ、やはり荷物は軽くするに越した事はない。

 車窓から眺める花に「あれは何なのでしょうね」と誰とは無しに問いかけた質問に(というより自然と先生に向けられた質問なのだが)、「あれはただの草花ではないですか」と、前の座席に座っていたおばあさんが、返事をしてくれた、真面目に答えてくれてとても楽しい気分にさせてくれた。私もいつか、温泉に入る為だけにこうして電車に揺られたい。今はまだ山が優先だけれど。

 会津高原駅からはバスを待たず乗り合いタクシ−を利用できたので時間が短縮できたのは幸いだった。登山口より少し歩くと先ず赤いツリバナが私達を出迎えてくれた。そして黄色い花のアキノキリンソウ、ヤクシソウ、コウゾリナ、白い花のシラネセンキュウ、うすいピンクのゲンノショウコ、アキノウナギツカミ等が、広い道の脇に次々と現われた。初めて見る花もあったが強烈なインパクトを与えてくれたのは山道に入ってから現われたツルリンドウだったろうか。赤い実が花の中からひょっこり出ていたのにはユ−モラスな印象を受けたが横たわったまま咲いているその花は可愛かった。

 空は真っ青な中に白い雲がぽっかり浮かび、登るごとに鮮やかになる紅葉が私達の目を楽しませてくれた。真っ赤なヤマウルシやナナカマド、ハウチワカエデ、黄色いコミネカエデ等。そして花が少なかった代わりに赤い実、青い実、黒い実が今迄見てきた草や木に美しく衣替えしていた。葉は枯れても充分存在感があった。人の散り際もかくあれたらその人生は素晴らしい。

 水場で数人の中年グル−プ(私達は?)と出会い、そこで梨(リンゴだったかな?)を戴いた。先生が水を補給している間ちょっと小休止。先生はあまり休めなくて申し訳なかったけれど、とてもお元気だった。

 周りの山を見通せる所に来るたびにこみあげる感動は、この時期ならではのもの。ところが次第にガスがかかり、時折雨も降って周りの視界がきかなくなってしまった。もくもくと木道を進み、発電機の音が聞こえてきた時はやはりほっとした。外はひんやりしていたが体はほてっていた。予定より1時間早く四時に到着。駒の小屋に着き、部屋に入ると一斉に「お疲れ様!」と拍手で迎えられた。びっくりしてしまった。このあったかさがたまらない。登り口で出会った青年は1時間前に着いたと言っていた。さすが!

 泊まるのは他に居ないと思っていたら合計13名。女性の二人連れ、年配のご夫婦、五人の男性グル−プ、青年ひとり、そして私達だった。和気靄々で、とっても良い雰囲気だた。私達が最後の到着だったが一番先に夕食の準備。素泊りの小屋は初めてだったが面白かった。すき焼きを作り、他の人のも戴いたりしながら話は自然と山の話で盛り上がる。何処にでも似たような人はいるもので、五人組の一人はワ−プロで記録を残していた。もう少し詳しい話など聞きたいと思ったが、全体の雰囲気がとても良かったので止めた。

 消灯は八時。朝が早いので早めに休んだが何度も目が覚めた。床が替わって眠れないというタイプではないのだが大部屋の雑魚寝はやはり慣れていないからだろう。日頃の睡眠不足もこういったところで解消されるものではなく、生活習慣はより敏感に反映してしまうようだ。

 月夜でもないのに夜中じゅう明るいガラス窓を眺めながら夜明けを待って、起床四時頃だったろうか。外は靄に包まれて神秘的な雰囲気だったが一人トイレに向かうのはさすがに緊張する。山頂からのご来光は無理そうだと、がっかりした思いで戻った。一人の青年も早出らしく起きてきたのでほっとして、仲間を起こした。簡単ながらボリュ−ムたっぷりの朝食を済ませたが、ガスにおおわれた周辺に気落ちしたのも手伝ってか、出発迄の時間に手間取った。この40分の遅れはそのまま下山時迄引きずった。

 でもガスは流動的なもの、木道を伝っていけば迷うこともあるまいし、やはり中門岳迄行きたい気持ちは強かった。

 会津駒ケ岳の山頂は周りが木で囲まれて、ガスが残っていなくても恐らく視界はきかなかっただろう。しかし山頂を極めた時の気持ちは例外に洩れずすがすがしい。

 そこから中門岳に向かった。夏ならば見事な花園だろうと思いつつ茶色に横たわった高原を淋しく眺める。そんな中にもオヤマリンドウは咲いていた。そしてとっても小さいミヤマリンドウも。ハイマツが風雪に耐えて地に広がり、ナナカマドやサビバナナカマドが赤く燃えていた。何の木か忘れたが黒い実を口に含みながらまるで月のような太陽の下を歩いていった。

 中門岳を折り返した辺りから雲間が微妙な色彩に変わってきた。雲の白、グレイ、ブル−、太陽のオレンジの光線が織りなしてその美しさに見とれてしまった。そして逆方向には山並みが広がってきた。半信半疑で眺めた山はやはり燧ケ岳だった。そして至仏山があり、日光白根山があった。山頂を周りこんで眺めたその背景と、昨夜泊まった駒の小屋が朝日に照らされて、それはいつか写真で見たヨ−ロッパの風景に似ていると思った。小屋に戻る私は充分気持ちが満たされていた。昨夜同宿だった人達と挨拶を交わしてすれ違い、小屋に戻った私達はキリンテに向けて出発した。

 あまり良いコ−スではないと昨夜聞かされていたが、とんでもない。自然林に包まれた山々は美しく紅葉して昨年の丹沢、行者岳を思い出させてくれた。途中からまたガスが山間へと流れこんでいったがこの風景は充分堪能した。ここで出会ったご姉弟二人連れ。お姉さんが私達くらいだろうか、一緒に歩いてくれる弟さんがいていいなと思った。

 とうとうシラビソ、コメツガ、トウヒの区別がつけられなかった。青い実が上に成っているのがシラビソ、赤い実が下に成っているのがトウヒ…あぁ−もう頭の中は、からまった毛糸状態。葉だけでは判断できない。でも真っ赤なゴゼンタチバナやツルリンドウ、マイヅルソウなどが、見てきた花の時期と重なって、親しみを感じることが出来た。今度は実を先に見たアカモノ(赤)やツバメオモト(青)、コケモモ(赤)等の花を見るのが楽しみだ。

 大津岐峠からの下山路は伊豆天城山とは又違った明るいブナの樹林だった。そしてシダ類が多く、先生の好奇心は絶頂に至る。ヒカゲノカズラ、リョウメンシダなど群生していて驚いた。リョウメンシダは増えやすいそうだがこれは美しいと思う。

 トチの実とミズナラの実(ドングリ)とウワバミソウをお土産にキリンテに着いたのは12時45分。先生のヒッチハイクのお陰で少し早めにバス停に着き、温泉に入る時間は厳しかったので取り止めたが、次のバスを待つ間、時間はたっぷりあった。無事下山を祝して乾杯し、ゆっくり食事をして土産の品を選る事もできた。 

 バスは尾瀬から帰る人でいっぱいかと思っていたが座る場所は残っていて助かった。でも檜枝岐ですぐいっぱいになってしまった。

 会津高原駅でメンバーの一人が帰りの車中の食事を念頭においていてくれたので空腹に悩まされることもなく、心もお腹も充たされて、引き続き話題は駒で締め括った。

 先生の15キロの荷物(水やコンロ、果物など必要不可欠なものが詰められていた)に畏敬と感謝するのみ。とにかく思い荷物を背負っての素泊り小屋一泊登山、お疲れ様。

      “朝ぼらけ雲霞を染めて幾筋の朱に混じり織り会津駒さす”
        “燧ケ岳会津駒より眺むれば登りし懐い今も鮮やか”

植物一覧(ビデオに収めたもの)
 ツリバナ、アキノキリンソウ、シラネセンキュウ(白い花)、ゲンノショウコ、イヌガンソク(シダ)、ナギナタコウジュ(シソ科)、アキノウナギツカミ、アカソ(葉が大きい、葉の先が三つに分かれている)、ヤクシソウ(黄色い花)、ヤマナシ(キ−ウィの味)、ボダイジュ(実がついていた)、ウワズミザクラ、アカバナ(花が咲いた後脂肪が長く伸びる、月見草の仲間)、コウゾリナ(黄色)、マンサク(葉が少し変わっている)、ハウチワカエデ、コハウチワカエデ、ニシキギ(ツリバナに似ている)、ミヤマガマズミ、サルオガセ(コケの下等なもの)、ハナヒリヌキ、オオカメノキ(ムシカリ)、ゴヨウマツ、ツルリンドウ(花と実、花の中に実がついて上に出てくる)、ユズリハ、ヤマウルシ(葉が真っ赤)、トチノキ、コシアブラ(イモノキ、ウコギの仲間で木がやわらかい)、コブシ(実が握り拳のよう)、マクワウリ、イヌツゲ(互生、ツゲは対生)、ナナカマド(赤い実)、ブナ(葉脈がはっきりしている)、イワナシ(梨のような実だそうだ)、ツルマサキ、ネマガリダケ(チシマザサ)、マイヅルソウ、コミネカエデ、ツルシキミ、ツクバネソウ(実が黒い)、リョウブシラビソ、ヤマソテツ、シノブカグマ、ハリガネワラビ、コメツガ、オオバノヨツバムグラ(キヌタソウの仲間)、タケシマラン、ヒカゲノカズラ、トウヒ、サビバナナカマド(オレンジ色)、オヤマリンドウ、ミツバオウレン、ミヤマワラビ、クロヅル、コミヤマカタバミ、アカモノ(赤い実、花は白くてとても綺麗だそうだ)、ミズキ、ウラジロモミ、シロバナイチゴ、ダケカンバ、オトギリソウ、ゴヨウイチゴ、ベニバナイチヤクソウ、ゴゼンタチバナ、シャクナゲ、アカマノイヌツゲ、ミヤマホツツジ、シラビソ、トウヒ、ハイマツ、コバイケイソウ、タカネアキノキリンソウ、オヤマリンドウ、ミヤマリンドウ、ツバメオモト、コケモモ、ヤマブキショウマ、オトギリソウ、タチコゴメグサ、アカミノイヌツゲ、ハリブキ、カラマツソウ、カニコウモリ、オオバユキザサ、ヤマウルシ、ヒカゲノカズラ、オニゼンマイ、オヤリハグマ、シラネワラビ、ミヤマイラクサ、クルマバソウ、クルマバムグラ、ヤマハッカ、マユミ、etc