奥秩父・大菩薩嶺
(だいぼさつれい2056.9m)
のんびり雪山を歩こうと日帰りコースを一泊で

 H15年3/1-2(土日)
  天気;1日曇りのち雪(夜雨)、2日快晴
  Member.夫婦

【大菩薩嶺:親不知ノ頭から(右端中段が小屋】右
 【コ ー ス 】
(〜は歩、休憩時間含む)

一日目(3/1)
林道登山口(丸川峠分岐)8:10〜丸川峠11:03-12:00〜(食事)12:40-13:00〜大菩薩嶺14:35-40〜雷岩14:48〜富士見新道分岐15:00〜賽ノ河原(市営休憩所泊)15:20
(所要時間約7時間10分・・休憩含む)

二日目(3/2)
賽ノ河原(市営休憩所)9:13〜展望場9:20-55〜介山荘10:08-17〜富士見山荘11:10-20〜福ちゃん荘11:25〜上日川峠(かみにっかわとうげ・長兵衛山荘)11:50〜(昼食)〜仙石茶屋13:40〜林道登山口(丸川峠分岐)13:47
(所要時間約4時間30分・・休憩含む)


 週末は大菩薩嶺をのんびりと一泊で歩こうかと話していた。しかし天気予報は下り坂、土曜雨というのが両日雨になっていった。微妙に変わっていく予報をチェックしながら、土曜曇りのち雨、日曜は曇りのち晴ということでLet's Go!となった。雨の可能性もあるが、山なら雪だろうと9割方思っていた。そして翌日の展望は期待できるのではないかという予測で前夜10時出発。

 勝沼ICでおり、途中のコンビニで食料を調達。裂石(さけいし)で青梅街道への道と分かれて右折。そこから車止めのところまで入った。夏はもっと先まで入れる(タクシーは福ちゃん荘まで入れる)が、冬季は丸川峠分岐の所で閉鎖されている。しかしその辺りに雪は全くなかった。駐車スペースがあり、十数台は置けそうだ。ここで車中泊。我々の一台だけだった。

一日目(3/1)

 天気が下降気味だったので朝早く出発しようと思ったが、お昼前に着いてしまっても退屈するし、雪だろうから降られても大丈夫だろう・・・。ということで、5時に起きたが眠くてもう一度寝てしまった。

 7時起床。支度をしていると雪がチラチラとほんの少し舞い始めてきた。気温は零度、思ったより高い。始めから両日雨模様の予報の中、登る物好きは他にいないだろうと思っていたら、一台車がきて、ご夫婦らしき二人連れが上日川方面へと歩いていった。軽装だったので日帰りかあるいは小屋泊まりなものか?

 今回私たちは、丸川峠の方から登ることにした。大菩薩嶺は既に3回登っている(百名山No.9参照)。大菩薩嶺から丸川峠へも日帰りで歩いたことがあるが、今回の逆ルートは初めてだった。ここでの一泊も初めてだ。

 8時過ぎに出発。この時大きなミスをしていることに、気付いていなかった(山のことではないが)。歩き始めてしばらくは雪が殆どなく、所々に少し残っている程度だった。アイゼン(12爪)とわかんは用意してきてあった。登り始めて上を見上げると尾根上部はガスっていた。しかし尾根全体が見渡せる所まで来たとき、落葉樹の向こうに大菩薩嶺へ至る稜線がきれいに見えた。

 始めの頃登山道は夏道に近かったが、次第に凍結した雪道が現れてきた。しばらくは注意しながらそのまま行ったが、さすがに緊張するようになったのでアイゼンを装着。まさにグッドタイミング!その直後アイゼンなしでは登れない所が出てきた。ここは太い木のあるところでその周囲がぐるりと固まったような状態だった。いつもこういう状態なのだそうだ(丸川荘の只木さん弁)。そこを過ぎればまた凍っていなかったり、凍っていたりで、アイゼンが邪魔に思えてきた。

 しかし、段々と雪に近い霙が降り出し、合羽を着たり、ザックカバーをかけたりしているので、アイゼンをしまうのが面倒になり、そのまま歩いていった。凍結している所も実際あるので着けていれば安心だ。とはいえ登山道に岩なども多少あるのでやっかいではあった。

 それにしても泊まりとなると荷物が重い。夫がばてるのを気にして、いつもは夫の方に入れるコンビニ調達の食料をこちらに入れたせいか、夫がけっこう快調。なぜか間隔があくばかり。私が写真など写しながら行っても、いつもならすぐに追いつくのに・・

左【丸川峠、丸川荘は近い】

 丸木の杭に渡された白いロープが両脇に見えてくると丸川峠は近い。間もなく丸川荘が見えてくる。外でちょっとだけ休んで先に行こうかと思ったのだが、ガスって展望がない上に風を避ける場所がなく、中で休ませてもらうことにした。天気が良ければ南アルプスが望めるようだが、前回同様今回も見られなかった。残念。

 ココア300円(休憩のみは200円)、美味しかった。飲みながら小屋主の只木さんといろいろ話をした。木彫りのことや、ホームページのこと、最近の登山者のマナーのこと、大菩薩の雪質のことや、皇太子様の御登頂(2002年9月)のこと、2年前(2001年1月)の大雪の時(丸川峠で2mだったそうだ)の遭難のことなどetc・・・話していて楽しく、面白かった。時間はアッという間に過ぎ、1時間もいたことにびっくり。急ぐ訳でもないので充実したひとときにむしろ感謝。

 ここで話したことを少しご紹介。木彫りはお土産品の木彫りのミミズクを見て可愛いと思い伺ったところ、それが只木さんの手作りであることを知った。飾ってある観音像なども手作りだそうでその見事さにびっくり(丸川荘HP参照)。ホームページは、大菩薩の最新積雪情報を調べていたとき丸川荘泊の個人レポートを読んだと言ったら、丸川荘のホームページがあると伺い、それからインターネットの話題になり、登山者の問い合わせのマナーの話題へと発展。「来週大菩薩に登るが、お天気はどうか?」と聞かれ、「気象庁に問い合わせてください」と答えたと聞いたときには吹き出してしまった。最近の登山者事情など興味深い話題でついつい長居してしまった訳だが、混んでいたらこんな話は出来なかっただろう。

左【只木さんと】

 丸川荘を出るとき12時。話に夢中で食事のことは忘れていた。アイゼンを着け、只木さんに見送られて大菩薩嶺へ。一変してここからは夏道はなく、ずっと銀世界。雪はさっきより降っている。霙だが雪に近い。トレースは終始しっかりついていた。アイゼンは雪で団子になり、むしろいらないと思ったが、しまうのが面倒なのでストックで落としながら行った。途中、風の無いところで昼食。ここで私たちと同ルートから男女二人連れがやってきた。出会ったのは朝の二人と、この二人だけだった。この日は長兵衛荘に泊まると言っていた。見送ってから私たちも支度して続く。のんびりしか歩けないので彼等に追いつくことはなかった。

 丸川峠からはずっと巻き道を行く。コメツガの樹林帯が降り積もる雪で優しいモスグリーンに変わっている。気温はマイナス2度。のんびり歩いていくのだが、これもけっこう疲れる。夫も私も足どりが重くなった。巻き道は単調で、天気が良くても展望が無い中、黙々と進んで行くが長く感じる。足下を見ながら歩いていると眠くなってくる。頭の中を何故か、SMAPの「世界に一つだけの花」が流れる。

左【巻き道からようやく登りに】

 ようやく山頂への登りにかかったとき、足下にちっちゃな蜘蛛が一匹歩いていた。「お〜い、こんな日に雪山単独行かい?おたがい物好きだね」なんて!それにしてもいったいどうやって生きているのだろう、感動!ヘアピンのように大きく右へ左へと行って、少し登るとやがて平坦に近くなり、そのまま山頂へと出た。

左【大菩薩嶺山頂】

 この山頂は樹林に囲まれて、晴れていても展望が望めない。どうしてここが百名山?と思えるのだが、大菩薩峠に至る稜線は展望も良く、お花畑がきれいでとても素敵なのは確かだ。

左【雷岩の分岐:強風でトレースが消えた】

 山頂を下り、樹林帯から抜けると、途端に風当たりが強くなった。北風で雪が容赦なく顔に当たって痛い。トレースもすっかり無くなっている。雷岩で唐松尾根に下るルートがあるが、そちらも消えかかっている。先行の二人は長兵衛山荘と言っていたし、多分唐松尾根を下ったと思われる。気温はこの時でマイナス4度。体感温度は先週の入笠山マイナス8度より低く感じる。風があると無いとでは、こうも違うのだ。

 私たちはそのまま稜線づたいに大菩薩峠に向かった。視界は約100メートル。それより先は真っ白で何も見えない。天気が良い夏道ならば、30分とかからず賽の河原の避難小屋につくはずだ。しかしあまりの強風に立ち止まること度々。それでもエビの尻尾が見事で、撮りながら行く。

 植生保護及び遭難防止のためだろうか、丸川峠の側にあったような丸木に繋がれたロープがあるので、それが見えていればルートを誤ることはない。はっきりしないところはピークを辿った。夏道はやや下にあったはずだと思いつつ。やはりひとたび雪山の天候が荒れると厳しい世界になるのはどこも変わらない。ようやく避難小屋(市営休憩所)が見えてきたのはかなり近づいてからだった。時すでに15時20分、これ以上は進まず、ここで泊まることにする。

 小屋は丸木づくりで中は12畳くらいだろうか。奥の板の間は6,7人寝られそうだ。入口を入ってすぐのコンクリート部分の方が広い。両脇が長いすに作りつけられており、奥の板の間につながっている。大菩薩は落雷が多いそうで、その避難目的に建てられているそうだ(丸川荘の只木さん弁)。窓などは機密性無くすきま風が入り込むが、丸木づくりの素敵な、そして快適な良い小屋だ。

 今回ツエルト(簡易テント)では心許ないので非常用にテントを持参した。しかし通常テン場は指定されており、大菩薩ではロッヂ長兵衛、福ちゃん荘の2箇所だけ。他の場所ではできないので要注意。小屋の中は零度(中に温度計あり)。しかし体感温度はもっと低く感じた。雪は7時頃には雨に変わり、風も強くなってきた。小屋にトイレは無い(ついでながら、使用済みTPは持ち帰るようにしている)。この日は他に登山者無く貸し切りだった。当然か・・・

左【記録を書いておこう・・・】

 小屋に入ってくつろぎ、荷物を出して早速お湯を沸かし、カップ汁粉を食べた。温まる。雪で湯を沸かし、今度は夕飯の準備。今宵はレトルトカレー。かたや梅酒のお湯割りを作っておつまみをつまみながら晩酌?夫婦共にお酒は強くないが、このくらいはたしなむ。やはり体があったまる。そしてどちらかと言えば二人とも甘党なので、チーズケーキを作ったりもする。(食べることばっかり・・だから荷物が重くなる・・(^-^;)これはさすがに食べられなかったので翌日の楽しみ(多分、朝早くは出られないだろう・・・)。

 天気予報を聞くと雨は今夜がピークで明朝は雨もあがり、午後は晴れるとのこと。しかし外の風は強い。雨雲は早くに遠のきそうな気がするが・・。山の上だからてっきり雪だと思ってラッセルのつもりでいたのだが、思いがけなく雨となり、ちょっとびっくり。春なんだなぁ・・。9時前には就寝。

二日目(3/2)

 一晩中風と雨音が強かった。時々どすんと屋根の雪の落ちる音が聞こえてきた。遅くとも10時頃までに出れば良いと思っていたのでゆっくりシュラフに潜っていたが、朝6時ごろ外に出てみると雨はすっかりあがり、青空になっていた。まだ黒い雲が風に流されている。あとは風がおさまってくれれば良いのだが、と思いつつ朝食の用意。ラーメン。

 しばらくしてコーヒーを飲みながらチーズケーキを食べ、片づけを始めた。この日の行程は短いから気楽なものだった。出発の準備を済ませてから外の展望を楽しみ、写真を写した。富士山も南アルプスもきれいに見え、大菩薩嶺もすっきりと見える。朝の清々しさが心地よかった。小屋周辺の私たちの足跡はすっかり消えていた。大菩薩嶺からの足跡もほとんど消えてしまっているようだった。昨日積もった雪もみんな強風で飛ばされてしまったのだろう。

 風がなかなかおさまらなかったので、小屋の掃除を済ませた後9時過ぎに出発。展望は雷岩の方に行ってみようと思ったがやめて、親不知ノ頭で楽しむことにした。それも風次第ではあったが。つぼ足では沈むのでわかんにし、目の前の親不知ノ頭へ、サクサクと気持ちよく登っていく。しかし強風で立ち止まること度々。不覚にも夫が飛ばされた?というか転がされた!?なんでぇ〜???。ひとまず立ち上がりまた進んでいく。一足進むたびに、雪面の表面がバリバリと割れて、たちまちの内に飛ばされていく。これがもし顔に当たったらたまったものではないが、風は右から左へ吹いていた。

左【富士山:親不知ノ頭で】

 親不知ノ頭では正面に富士山、手前に丹沢の山並み。右に南アルプス、乗鞍、そしてそれらより近い位置に金峰山など見える(大菩薩峠の山座同定盤で確認)。風が冷たいと思い、目出帽を被っていたが、それほど寒くはなかったし、素晴らしい眺めなので、しばらくそこで写真撮影などしながらゆっくりした。この爽やかな山の上からの展望も二人占めだった。静かな大菩薩嶺、珍しいことだった。山での泊まりはこれが魅力だ。

 充分堪能した後、大菩薩峠へと下る。そちらも誰一人見えない。昨夜泊まった人はいないのだろうか?北側の奥多摩の山並みを夫が説明してくれる。エアリアマップの範囲しか頭に入っていない私と違い、かなり正確に山並みを言い当てる夫が頼もしく思える。私の方が山へは行っているのにどうしたことだろう?オートバイで走り回った成果だね、きっと(^o^)と、私の負け惜しみ(^o^)

左【雲取山(左端)から鷹ノ巣山(右)が見える】

 途中中里介山の碑などの前を通過しながら大菩薩峠へ下りると、奥多摩の山並みはさらにはっきりした。今まで隠れていた雲取山が見え、先々週私が歩いた雲取山から鷹ノ巣山までがきれいに見渡せた。樹林があるので写真にはきれいに撮れないが、行ったばかりなだけに感激だった。夏は葉が出て、更に見えにくくなるのだろう(見えないかもしれない)。今の風景なればこそだ。

 この峠から小菅方面へ下っている新しい足跡があった。昨夜介山荘に泊まった人が強風で諦めて下山したのだろうか。ここで山座同定盤を見ながら山並みを確認して下山。直進すれば熊沢山を越えて石丸峠、夏ならばお花のきれいなところだ。今回は上日川方面へと下山した。左に富士山を見ながら下るがここも葉が出れば遮られる。冬はこのみっけものの風景が嬉しい。

 山頂での風は最早ここでは無く、落葉した雑木林の間から射し込んでくる日射しは暖かかった。途中で登ってくる男性一人に会い、少し話した。こちらから丸川峠へ回って下りるそうだ。この日は快晴で展望も良く、誠に良いタイミングで登ってきて良かったねと、夫と話していた。ここでわかんは外しつぼ足になる。このあとも次々と登って来る人と出会った。

 富士見小屋はその名の通り、富士山の眺めが素晴らしい。そこでもしばし堪能。小屋周辺の眺めも素敵だった。ここで暑くなったため上着を脱いだ。

左【上日川峠へ】

 気持の良い登山道をのんびりと歩いていき、福ちゃん荘まで下りるとそこは唐松尾根、富士見新道への登山口でもある。皇太子殿下と雅子様が休憩されたという福ちゃん荘を通過し、長兵衛山荘のある上日川峠へ。ここまでの登山道はストックの力を借りてつぼ足で楽に下りて来れた。夏はここの駐車場に停めて登ったことがあるが、冬季通行止めの今は路面も凍ってツルツルだ。ここから登山道を下っていく。途中休んで昼食をとり、再び下山。

 今までと違い、アイスバーンが随所に現れる。かと思うと夏道でトコトコ下りて行けるものだから、アイゼンも履く気になれない。アイスバーンでは気を遣いながら下りていった。下りなのに当然スピードはあがらない。しかし右手の北側に目をやれば歩いた大菩薩の稜線が望め楽しい。今頃は今日登った人たちで賑わっていることだろうと思いながらやがて林道へ出る。この時気温は11度。暑い。

 少し下れば仙石茶屋で右は上日川峠、左は裂石へと行く林道とぶつかる。以前ここでこの分岐を見損なったため、延々とそちらの林道を歩いていったことがあった。それでも丸川峠を回ったのだった。バスだったので裂石からの周回コース日帰りだった。沢山咲くお花畑の中でマツムシソウとコメツガの樹林帯の中にひっそりと咲いていたヒメイチゲが強く印象に残っている。

 林道に雪はもう無く、のんびりと下っていった。栗畑を通過して間もなく丸川峠分岐に到着。駐車場に着いた。車は9台停まっていた。しかしここで驚いた。車の後ろ側窓が開け放しだった!?あれ?車中泊で中がごちゃごちゃの所を見られて恥ずかしかったなぁ・・・と思いつつ、雨で濡れていないか触ってみたが、全く雨が吹き込んだ様子はない。北風で幸いだったのか、あるいは少し隙間があって、朝誰かが開けたのかと妙ではあったが、中に異常はなく一安心。このときの夫婦のやりとりは頭にきたので割愛(^-^;

 この後少し車で下ったところにある大菩薩の湯へ。きれいで中は広く設備が整っている。露天風呂あり。シャンプー、ボディシャンプー、ドライヤーあり。午前10時から午後9時まで(受付10時から8時まで)、市外在住者は3時間以内600円(子供半額)。一日過ごすことも出来、その場合は1000円(子供半額)となる。