北アルプス;五竜岳〜唐松岳〜鑓ケ岳
(ごりゅうだけ〜からまつだけ〜やりがたけ)

お花見と温泉を楽しみに


 H10年7月18日(土)〜20日(月)・ Member.5人(宮沢、大河内、亀井、小杉、石原) 【五竜岳をバックに】右 

【一日目】7月18日(土) 天気;晴
[急行アルプスで立川0:19乗車、神城5:32着]
神城駅発〜遠見スキー場(テレキャビンでアルプスだいらへ)〜アルプスだいら7:20〜地蔵の頭7:40-45〜小遠見山9:10〜大遠見山〜西遠見山11:00-20〜白岳〜五竜山荘13:05着(テント設営後山頂へ)13:55発〜五竜岳山頂14:50-15:20〜五竜山荘15:55(テント泊)

 スキー場までは徒歩約30分。テレキャビンは7時から乗れる。手荷物代込みで片道千円くらいだったと思うが、忘れてしまった。アルプスだいらからのリフトは動いていないのでここから歩き。

 今回はリーダーがシラネアオイを見たいと言うのも目的の一つだった。しかし既に終わっており、地蔵ノ頭はシモツケソウが満開だった。全コースお花畑が見事で名前をあげたらきりがない。ブルーベリーの実が成っていて、味わいながら歩いたのは初めての経験。

 小遠見からは鹿島槍が見えると期待していたが、ガスで全景を見る事が出来なかった。残念。大遠見はいつのまにか通り過ぎてしまい、まだかまだかと思っていたらいつの間にか西遠見でびっくり。思っていたより先に進んでいたというのはなぜか嬉しい。ここは池塘があり、チングルマが沢山咲いていた。登山者は多かったものの、適当に前後しながら気持ち良く歩けるといった感じだった。

 西遠見からの登りがきつく感じられ、ガスの合間から五竜山荘が見えた頃、スレ違った下山者に雷鳥がいると教えられる。少し行くと登山道のすぐ側に2羽。しばらく皆で眺めていたが、動きが可愛い。ひと登りすると眼前に唐松岳が大きく見え、やっと山並が一望できたと感激。五竜小屋は唐松と反対方向に下れば5分とかからぬ場所にある。

 テント設営後五竜岳にピストン。登山道はガレ場や岩場で、注意が肝要。紫のリンドウの花に心和む。ガスで遠望はきかなかったが、山頂に立つ喜びはひとしおだった。30分程待ってみたが晴れているのは五竜山頂だけ。その上空だけがポッカリ青空、なんとも不思議な光景だった。

 テン場に戻り、夕食の用意。メニューは野菜たっぷりのチーズフォンデュー。さすが若いお嬢さん(今回の食当)の考えたメニュー、うちの娘が喜びそうだと思いインプット。その間ガスは晴れ、五竜が綺麗に現れた。稜線に射す太陽の光は長く、強いもので、6時を過ぎても山頂に人影が見えた。7時になっても明るく、テント内にはまだほてりが残っていたが、疲れと夜行の寝不足で私達は夕日を待たず眠りについてしまった。



【二日目】7月19日(日) 天気;晴
五竜山荘(起床3:00)4:30〜分岐4:30-42〜唐松岳頂上山荘7:05-30〜唐松岳山頂7:50〜三峰〜二峰8:50〜(不帰嶮9:00-9:30)〜一峰〜不帰キレット(長い鎖場)〜天狗ノ大下り(大登り?)〜天狗ノ頭〜天狗平〜天狗山荘13:15(テント泊)

 夜明けと共に出発。天気は良好。雲海と日の出を右に眺め、唐松への稜線を行くと、左側の五竜岳の陰から威風堂々と一際目立つ剣岳が見えて来る。いつか登りたいと思いつつ、今回登山中の名前のみ知る剣オフミの方々を思い浮かべた。

 ハイマツの稜線は気持ち良く、大変であろう今日のコースの先の事を、束の間忘れさせてくれた。甘い香りが漂い、これがハイマツの香りだということも今回初めて知る。

 唐松山荘でゆっくりひと休みし、唐松岳へ。山頂は写真だけ撮って早々に通過。

 左【唐松岳山頂で】
 (宮沢、小杉、亀井、大河内、石原)

 いよいよ“不帰嶮”と、少し緊張。MMLの方々からの情報も得ていたし、今回岩登りの達人が二人いて、この日は荷物も少し減らしてくれたのでいくらか気は楽だった。ピークに表示がある訳ではなく、通過してから「あぁ、あれが三峰、あれが二峰だったのかな」と振り返るような調子。不帰嶮は心配するほどではなく、時間的にも30分程だった。すれ違いの渋滞も心配したが、終わりの頃に交差しただけで済み、ラッキーだった。不帰キレットではすれ違いで少し時間がかかり、相手を待っている間に後続の夫婦二人連れが前に入り込んできたのにはびっくりしてしまった。

 また、通過を待つ間に感じた事がいくつかあった。まず、岩場に慣れていない人があまりに多いのが目についた。三点確保が出来ていないし、腰が引けている人が多いように思う。しかも先日来MMLでも話題になっていたストックを、腕にかけたまま引き摺っている人も何人かみかけた。つい見かねて「ストックはしまった方がいいですよ」と注意してあげたら、その時初めて気が付き「ありがとうございます」とお礼を言ってすぐしまってくれたので、いつか松成さんが「皆、結構知らないのですよ」と書かれていたことを思い出した。数珠つなぎに前後に人が繋がっていたり、危険な場所に遭遇したりといくつもの悪条件が重なったら、必死な気持ちと焦りで気持ちのゆとりが無くなってしまうのかも知れない。岩登りに慣れている私達のメンバーの一人はそういう人たちに「ゆっくり。慌てないでいいですよ」と声掛けする。すると通る人の表情が和む。

 そして、若い男性の震えている足が気になった。恐いのではなく、疲労からくるものだと思ったが、重いザックを担ぎ、休めるような場所でもない所で、ただ頑張ってねと願うしかなかった。自分の力量を事前に判断する事と実際のギャップがこんな所で出てしまうのは恐いと心から思い、ひと事とは思えなかった。

 私達が閉口したのは天狗ノ大下りだった。私達にとっては登りだったが、その距離はとてもきついものだった。そして上の方には又岩場があり、ここでもぞくぞくと岩に慣れていない人がこわごわと下りて来るのを見かけた。べそをかきながら年輩の男性に掴まりながら下ってくる若い女性。この先のコースではもっと恐い思いするのではと、先が見えている。そしてこの男性のフォローも危険だった。女性の下側にいたので、女性が足を滑らせたら二人とも間違いなく滑落する。きっとザイルは持ち合わせていなかったのだろう。使っている人はいなかったが。たまたまその場所でシュラフを落とした人がいて、それが目の前でポンポン弾けながら、そのまま谷の方へ消えてしまった。怖がる人の極度な緊張感が、それを見て余計増したかも知れない。下る人には鎖があった方が良いような場所だった。例え岩に慣れている人でも、油断すれば危険は一緒だ。私自身岩が好きと言える程の技術はないが、嫌いでもない。でも、もう少し身近なショートコースで歩き慣れた方が良いと思える人が多かった。連休で人が多かっただけに、客観的にいろいろと感じた。

 それらを通過後の天狗尾根で、私達はもうぐったりだった。行けたら鑓温泉までとリーダーをはじめ、それぞれの胸に描いていた希望はしぼみ、予定通り天狗山荘におさまった。

 天狗山荘はとても良いテン場だった。雪渓が残っていて水は無料で自由に使える。トイレは小屋の中のを使用でき、トイレットペーパー付き、手洗いの水道付きだ。まわりにはウルップソウと、なぜかカントウタンポポがいっぱい咲いていた。これまでの稜線にはヨツバシオガマ、タカネスミレ、タカネツメクサ、ミヤマダイコンソウ、少しだったがコマクサ、早くもトウヤクリンドウまでもあった。MMLで戴いた情報に違わず、静かな、素晴らしい所だった。午後1時過ぎという早い到着だったが、それに合わせたようにガスが出始め、その後は夜まで晴れなかった。これで鑓のピストンも止め、テント設営の後は宴会(といってもビール1缶ずつ、あとはおしゃべり)。夕食(五目寿司やサラダ、ひじき、吸い物など)と、雪渓の氷を使って冷やしたデザート(杏仁豆腐、チーズケーキ)など、テント泊とは思えない豪華版で、楽しく過ごし、8時就寝。



【三日目】7月20日(月) 天気;曇り後雨
 天狗山荘(起床3:30)4:55…分岐5:15-20…鑓ケ岳山頂5:45-55…分岐6:05-15…大出原…鑓温泉小屋7:35-50…小日向ノコル9:25-30…分岐(林道)…猿倉10:35(電話予約したタクシーですずらんの湯ヘ)
[南小谷発14:51発スーパーあずさ10号にて八王子18:01着]

 雲の合間からのご来光を仰ぎ、出発。今日は下山なので、昨日軽くしてもらった荷物を再び自分のザックへ。

 とはいえ、先ずは緩やかな登り。辛いと思いつつ最後尾について行った。間もなく硫黄の匂い、鑓温泉の匂いが届いてくる。

 鑓温泉へ下るが、鑓ケ岳をピストンするので分岐へ荷物を置いて行く事にした。リーダー(女性)はトレーニングの為背負ったままだ。おそらく15キロ前後だろうと思うが、他4名は空身になったので彼女のピッチは逆に上がった。荷物を持っていない私の方が、付いて行くのに大変で少し距離が開いてしまった。エアリアマップ40分のコースを約半分のタイムで山頂に到着。私より一つ年下なだけなのに、この差は何なの?と目を丸くする。
方々を思い浮かべた。

 今回一番高い鑓ケ岳山頂(2903.1m)はガスがかかって視界は全く望めなかった。残念ながら白馬岳も見えない。もちろん白馬オフミの人たちは?と人の波を捜す事もできなかった。山頂には15分程居て、下山。ザックを背負ったままのリーダーは今度は小走りに下って行った。「えーっ!今度は走るか!!」と笑いながらみんなで後ろに付く。ガレ場の登山道はちょっと夏の富士山を思い出させた。ザックを置いてある場所に戻ったのはやはり約半分のコースタイム。なんて強じんなリーダーなのだと驚嘆。

 雨が少し降り出したので上だけ合羽を着て下山。しかし割合早いペースだったので、暑くなり、結局脱ぐ。この下山ルートはお花畑がとても素晴らしい。ハクサンフウロ、ミヤマキンポウゲ、タテヤマリンドウ、ハクサンコザクラ、クルマユリ、イワオウギ、オヤマノエンドウ、イワカガミ等。アルプスのハイジが羊と共に現れそうな風景だ。

 ちょっとした鎖場を通過して間もなく鑓温泉に到着。登山道から見える露天風呂のお湯は意外にも綺麗だった。ここで一泊して夜になってからでも入りたい気分だ。

 鑓温泉からの下りは下山者が多く、渋滞となった。しかしゆっくりペースの人は後ろから人が近付く気配を感じると、殆どの人が脇によける。私達も同様だが、相変わらずペースが早くて先を譲って貰う事の方が多かった。雪渓もあり、その上を通る所もあったがアイゼンは必要無かった。植相はガラリと変わってくるが、お花の種類は相変わらず多い。ニッコウキスゲ、タケシマラン、ミソガワソウ、ツリガネニンジン、白いホタルブクロ、ナデシコ、ウツボグサ。もしかしたら間違いもあるかもしれないが、とにかく種類の多さに驚かされる。小日向ノコル辺りからミズバショウの大きな葉が時々現れる。お花はもちろんもう終わっている。段々と雨が強くなってきたので更にピッチを上げ、猿倉には予定より早く到着。

 タクシーを呼び、待つ間に青りんごを買って食べた(\250)。白馬駅近くの『みみずくの湯』(\400)で汗を流し、歩いて駅へ。スーパーあずさに乗るが、座席指定はとれず自由席。結局座れず、通路の中程で座ったり立ったりしながら約3時間。帰宅は7時半頃になった。

“眺望を隠して五竜の上空は青空円く手を伸ばす吾”