丹沢・袖平山〜蛭ヶ岳〜焼山
 (そでひらやま1431.9m〜ひるがたけ1672.7m〜やけやま1059.6m)
 北丹沢の雪山を楽しむ。昨年撤退の蛭ヶ岳へ!

 H14年2月10-11日(日月)
  天気;10日雪のち晴れ、11日晴れ
  Member.2人(夫婦)

 【コ ー ス 】
(〜は歩、休憩時間含む)

10日(一日目)
西野々6:55(バス7:17発)=東野7:35〜林道登山口(登山カードの箱あり)8:30-40〜(休憩9:40-50)〜八丁坂ノ頭11:15-25〜姫次(ひめつぐ)12:00〜30〜袖平山12:55〜姫次13:10-20〜原小屋平13:40〜地蔵平13:55〜(休憩14:25-35)〜(夫休憩15:40-?)〜蛭ヶ岳山頂16:05(夫と16:25)
(所要時間約8時間50分・・休憩含む)

11日(二日目)
蛭ヶ岳8:10〜地蔵平9:35〜原小屋平9:48〜姫次10:13--35〜八丁坂ノ頭10:55〜青根分岐11:13〜黍殻避難小屋分岐11:18〜大平分岐11:27〜(休憩11:40-50)〜平丸分岐12:00〜鳥屋分岐12:18〜焼山12:30-13:08〜焼山登山口分岐13:47〜西野々14:40
(所要時間約6時間30分・・休憩含む)

【姫次より蛭ヶ岳を望む】右


一日目(10日)

 近いが行けそうで行きにくい場所にある北丹沢。まきたさんの北丹沢山行に誘発され、行ってみる気になった。数日前まで風邪でダウンしていた長男一家の世話をしていたため、週末の予定はまったく立てていなかった。この情報を得て、丁度良かった。その後娘につき合って飯盛山まで行ってはいるが、今週末はこちらが寝込むかなと思っていたのだ。しかし、まだまだそれほど柔な体ではなかったようで、早速一泊の予定でプランを立てた。

 連休だから大勢の人が入るだろうと予想はしたが、我々の準備はいざというときのビバークも可能な装備。荷物が重くなると果たしてどこまで歩けるか、これは夫次第。私は東海自然歩道の部分だけ歩ければ良いと思っていたのだが、意外にも蛭ヶ岳まで行ってみようと夫が言う。昨年の今頃、檜洞丸から蛭を目指そうとして撤退していたのを思い出す。昨年は例年にない大雪で、丁度気象条件が悪かった。今回はとにかく姫次までの様子で判断しよう。しかし蛭ヶ岳山荘は今年、1/20-3/15まで閉鎖しているそうだ。目的は東海自然歩道を歩くことだから、丹沢までの縦走は考えていない。一泊となると、早めに蛭ヶ岳をピストンして、せめて黍殻避難小屋まで戻るか、どこかでテント泊となる。無理をせず、できるだけ安心を持ち運ぶのが私たちのポリシー。丹沢の山域はテント泊は禁止だが、やはり雪山だ。装備にテントは欠かせない。もちろんツェルトも可だが、ビバークするほどならば雪山の場合テントに越したことはない。靴は革の重登山靴、わかんとアイゼン12爪を持ち、今回はストックでなくピッケルにした。しかし両日とも雪質は凍ることなくパウダースノーだったためアイゼンは全く使わず、トレースもしっかりあったためわかんも使わなかった。

 バスの便が少ないことなど交通の便があまりよくないことから前夜のうちに車で出かけた。駐車スペースがあるかどうかよく分からなかったが、出来れば西野々において、周回コースをとりたかった。ところがバイパスの出来ているのに気づかず、西野々を通過。そのまま東野の方を先にチェック。途中工事で迂回路がとられてその先には進まなかった。しかし翌日そこを通ったとき、工事中の箇所はなく、登山口の方に数台の車が入っていた。???

 再びもどってようやく西野々バス停を発見。そこから登山口を少し入ったところの蚕影山(こかげさん)公園の側に空き地があったのでそこに置かせてもらうことにした。夜中過ぎの到着だったため朝一の6時15分発はやめ、次の7時17分発に乗ることにして車中泊。7時台はこの後に49分発があるが、そのあとは1時間から1時間半に1本の割合で、少ない。

 朝、乗客は私たちだけだった。東野で下車。そこから八丁坂ノ頭を目指す。雪がチラチラと舞いだして、山の方はガスっていた。天気は回復の予報だったが丹沢はこのまま雪になってしまった。以前塔ノ岳から主脈縦走をしたとき、時間切れで西野々へは行かず八丁坂ノ頭から東野に下ったことがあった。その道を今回は逆に登っていくのだが、10年前のことで、その時はここをただひたすらにバスの時簡を気にしながら下ったように思う。焼山の方に歩いていきたいというのはその時からのやり残した思いだった。

左【一日目の姫次で】

 林道から山道に入るところで登山者カードを入れる箱があり、入口には蛭ヶ岳山荘閉鎖のことも書かれてあった。車が数台この近くに置いてあった。おそらく登山者のものと思われる。記帳して少し休んだあと登り始めた。少しずつ積雪が増えていくが凍結しているわけではないので歩きやすい。1時間に一本、約10分ほど休憩するが、八丁坂ノ頭に近づくにつれ、夫が辛そうになってきた。立ち休みしながらゆっくり進む。東海自然歩道と合流、八丁坂ノ頭だ。一休みしてから姫次へ。

 東海自然歩道の全行程の中でも一番高いところがこの姫次の1433m地点なのだそうだ。そう書かれている前を通過すると落葉松林に囲まれた姫次の休憩場所がある。ジャスト12時に到着。残念ながらガスって展望はない。丹沢方面から歩いてきた人が大勢休んでいた。蛭ヶ岳までのトレースは心配いらないようだ。

 大菩薩嶺に行っているだめちゃんと、12時に無線を交わすことになっていたので急いで無線機を取り出し呼びかけてみた。何回かやってみたが応答がない。雪は相変わらず降り続き、じっとしていると寒い。無線機が濡れるので交信を諦めてしまい、サンドイッチと温かい飲み物で昼食。夫が調子悪そうなので、ここで袖平山をピストンして黍殻避難小屋に泊まろうと提案。明日調子が良くなればそこから蛭ヶ岳をピストンすればいい。夫は「俺にとって蛭は遠いなぁ〜・・」とポツリと言いながら、「とりあえず休んでいるから一人で袖平山に行って来いよ」というので、空身で私だけ往復してきた。

左【袖平山山頂】

 こちらはこの日歩いている人はいなかった。神ノ川に抜ける途上に展望場があり、天気さえ良ければ蛭ヶ岳が大きく眼前に見えそうだ。山頂にも行ってみた。ここも同様に展望がよさそうだ。富士山も見えるのではないだろうか。急いで引き返し姫次に戻ると賑やかだったそこは夫の他に一人の男性がいるだけの静かな場所になっていた。少し明るくなり、かすかに蛭ヶ岳が見えた。この日丹沢方面から縦走してきた人は多かったが展望は残念だった。

 私はすっかり避難小屋に戻るつもりだったのだが、夫が「休んだから大丈夫。蛭ヶ岳へ行こう」と言う。明日調子よかったらまた登り直そうと言ったのだが、戻って登り直すのが嫌らしい。毎度のことながらテント装備だと重くてばてるんだよね、この人は・・・なのに、それでも一生懸命こうして歩こうとする。こういう気力はすごい。元々足にも体力にも自信のあった人だからがんばれるのかも知れない。一方けっして体育会系ではなかった私の方が夫に比べややスタミナがあるようだから、おかしなものである。とにかく今回は時間的に余裕がある。装備もしっかり揃っている。のんびり行っても暗くなる前には山頂に着くだろう。

 私が袖平山に行っている間ゆっくり休めたから楽になったと言いながら、夫は初めのうち快調に歩いていた。「この分だと3時には山頂に着くだろう」と。ところが姫次からぐんぐん下がり、蛭ヶ岳への登りになった途端、またもやペースダウン。ゆっくり登ろうと、急がず慌てずのんびりと登っていく。そんな中、蛭ヶ岳日帰りですという人が数人いた。山頂での展望は望めなかっただろうに、気の毒だった。下山も明るいうちに出来ると良いのだが。一方私たちを追い抜いていく人はおそらく丹沢山のみやま山荘に泊まる人だろう。どの人のザックを見ても日帰りとそう変わらない装備だ。

左【蛭ヶ岳山頂で】

 おそらく最後の休憩場だろうと思われたところで私だけ先に行くことにした。着きそうで着かない急登でペースをあげるものだからスローペースに馴染んでいた私も息があがった。とにかく先に荷物をおいてまた下りてこよう。それにしてもここをもう一度登るのは嫌だなぁと思いながらようやく山頂に着いたのは4時を少し回っていた。しかし嬉しいことに天気が回復して展望が開けている。木々には降った雪が張り付いて樹氷となってキラキラ輝いてとてもきれいだった。

 ひとまず山荘の避難小屋に荷物を出し、空のザックを背負ってふたたび下っていった。間もなく登ってくる夫の所まで行き、荷物を少し移そうと思ったが、そういう場所でもなかったので、ザックを交換して空のザックを渡し、私が夫のザックを背負った。私「ン?」、夫「重いだろう」、私「私のより軽い・・・」、夫「・・・;;;」。こうして登った山頂。頑張った夫に夕焼けがあたり、私も「頑張ったからご褒美だね」と言う。夫は頭(おでこ?)から光をはね返して喜びをいっぱいに表していた?!

 誰も居ない山頂で、展望を思う存分楽しむ。この日蛭ヶ岳山頂からこの展望を見られたのは、おそらく私たちだけではないだろうか。南東に丹沢山、塔ノ岳、その左の西の方に丹沢三峰、宮ヶ瀬湖。西は昨年歩こうとした檜洞丸からの稜線、北西に大室山・加入道山、その向こうに道志の山々、奥多摩の山並み。そして何より嬉しいのは富士山が見えたこと。山頂付近が少しガスっていたが、雪だった一日の締めくくりでこんなにも沢山の姿を見せてくれるなんて、とても嬉しい。あれは愛鷹山、あれは三ツ峠山、そしてあっちは御正体山と、飽くことなく二人で山座同定を楽しんだり、写真を写したりした。雲海も広がってとても美しい。気温はずっと氷点下だったがこの時は不思議とそれほど寒くは感じなかった。以前ここに登ったときはガスっていたので、実際には初めて見る山頂からの展望だった。

 山荘の自炊室を避難小屋として開放していたので使わせて貰うことにした。元々が自炊室のため、寝るスペースが用意されているわけではない。他に人がいたら大変だったが、二人だけだったので、椅子を寄せて寝台にして休むことにした。勿論、朝には元に戻したことは言うまでもない。避難小屋として使う場合一人3千円というのは高いと思ったが、こうしてある以上、テントにするわけにもいかないだろうし、小屋経営もいろいろとあるのだろうからと料金箱に二人分6千円投函。水も自己申告で2リットル500円、500ml300円となっていた。水は用意していったものと雪解け水を作って済ます。ストーブもあったので点けようとしたが、火がつけられなかった。

 夕食は野菜とシーチキンの煮込みにお餅を入れたものと、麻婆春雨。自家製の梅酒を持っていったのでお湯割りにして乾杯。食後外に出ると夜景がきれいだった。しばし楽しんだ後6時半頃にはシュラフに入った。なかなか寝付かれなかったが、明け方までには少し眠ったようだ。

左【富士山:蛭ヶ岳山頂より】

二日目(11日)

 明るくなるのを待って6時起床。まだ街は灯りが点っている。小屋の中も氷点下5度。外は氷点下15度だった。天気は晴れのようだ。展望もまあまあ良い。うどんを食べて温まり、支度したあと、山頂展望をゆっくり楽しんだ後出発。そろそろ丹沢方面からも人が来ることだろう。

 下りでは昨日登った袖平山からこれから行く稜線が見渡せる。急いで下りず、周囲の風景を楽しみながらゆっくり下っていった。雪は昨日同様スノーパウダーで凍っていないためアイゼンはつけなかった。多少滑ってもアイゼンを引っかけたり、団子になるよりははるかに歩きやすい。夫もずっと、調子よく歩いていた。山頂直下で風の通る場所では前日のトレースが早くも消えていた。ラッセルが出来ると喜んで、せっせと進む。この後はもうそういう場所はなかったが、それでも雪山歩きを十分に楽しめた。

左【雪山歩き】

 姫次に着いて蛭ヶ岳を振り返る。小屋がはっきり見えると妙に感心してしまった。ここから見る蛭ヶ岳の姿は素晴らしい。袖平山には前日登ってしまったので、ここでゆっくり休んだあと焼山へと進んだ。八丁坂ノ頭から先は初めて歩くコースだ。連休ということもあってか、ここもトレースがはっきりしていた。でものんびり歩けてそれはそれでよかったかもしれない。

 焼山には大きな鉄塔のような展望台が建っていた。けっこう高い。上ってみたが、残念ながら蛭ヶ岳方面はもうガスがかかって見えなかった。一日のお天気は変わりやすいようだ。焼山のいわれが書かれてあったが、昔将軍の猟の妨げになるため毎年火を入れられたためつけられた名だそうだ。姫次から来ると山というより稜線上の通過点という感じだ。ここでのんびり昼食。上着を着なくて済むほどの陽気だった。

 ここから下山。しばらくは雪があり、そのうち場所によりあったり無かったり、凍結していたり、と言った状態だった。それもわずかな間だったので、そこだけ注意して結局アイゼンは使わないままだった。イノクボ沢に掛かった木の小さな橋を渡ってすこし上ると林道に出る。そしてまもなく西野々、車の所に無事到着。その頃になってまた雪がチラチラしてきた。また丹沢は雪なのだろうかと思いつつ、この日は温泉にも寄らず、道が混む前に帰路についた。明るいうちに自宅着。