越後; 飯豊連峰
(いいでれんぽう)

お花見と雪渓とブナの樹林帯と…


H8年8月5日〜8日(月〜木)前夜発 ;
    Member.計3名(青木・麦島・石原)

  コースは下記


1日目(8/5)
 川入キャンプ場9:20〜下十五里10:05〜中十五里10:22〜
 水場(峰秀水)12:25ー??〜三国岳2:05ー30〜切合小屋3:55(泊)

 新宿22時23分発の夜行で出発。アトランタオリンピックの男子マラソンの結果を気にしつつ家を出たので自宅に電話で聞いた。残念ながら日本は期待の谷口19位でメダルには届かなかった。有森裕子が銅メダルで連続メダルに「頑張った自分を誉めてやりたい」という言葉を三人で話しながら車中の人となる。その言葉がこの山行の下山時にそのまま自分たちの言葉となることを想像もしないままに。翌朝5時頃新津に到着。1時間程寝ながら待った後、盤越西線に乗り換え、山都駅で下車。青木さんが予約してあったタクシーに即乗り込む。名物の運転手さんと青木さんとの会話のやりとりを聞きながら、噂に聞いた通り途中自販機のウーロン茶をご馳走になり、求めに応じて住所氏名を記帳。途中雨が少し降ってきた。

 登山口の川入キャンプ場に着く頃には止んできて、辺り一面濃い緑に包まれていた。一雨降って歩きやすい道を踏み出すが、しばらく行くとやや急登になってくる。天気は回復して晴れ間が射し込んできた。1時間ほど行くと、中十五里で水場があるため下って行き、飲んで顔も洗ってきた。冷たくてとても気持ちよい。なおも登り続けると木立の合間から吹き抜けてくる風が心地よい。ゆっくり休みながら1時間半ほど急登を行き、横峰小屋跡に着くとやっとなだらかな登山道となる。そして20〜30分も歩けば峰秀水と呼ばれる水場が登山道のすぐ側にあり、これが又とってもおいしい。水源豊かな山はなにより嬉しい。尾根に取り付くまで、もうひとがんばりだ。だが尾根には剣が峰の岩稜帯が待っている。下りの人とのすれ違いに気をつけながら行っても1時間足らずで山頂に着いてしまった。汗びっしょりになった体を三国小屋の陰に休めると渡る風が冷たくて今度は逆に日向へ行きたくなった。休んでいると目の前に大日岳、飯豊の山々が大きく見える。思った以上に雪渓が残っていて驚きつつ美しさに目を見張った。とても満足だ。ここは水場がかなり下なので行かずに通り過ぎた。あと1時間半ほど歩けば今夜のテン場、切合小屋に着く。鎖場をいくつか通過して、種蒔山を越えると登山道にも尚雪が残っており、思い掛けなく雪面を歩くことになった。これは火照った体に都合が良かった。この時期に珍しいシラネアオイやイワカガミ、ショウジョウバカマがとても新鮮に感じられた。しかも小屋近くには秋口に咲くマツムシソウまで咲いていて二度びっくり。切合小屋には4時近くに到着。ポンプアップされた水が豊富にあって嬉しかった。麦島さんと、一缶800円なりのビールを買って分け合ったが、嗚呼、やっぱりぬるかった。

 余談だが私達がウトウトと眠りについた頃、トイレに閉じこめられた人の声を聞きつけて青木さんが救助。全くその人のそそっかしさなのだが、扉のガラスにヒビを入れてしまって、こんな山中弁償するではすまされない。

2日目(8/6)
 切合小屋4:45〜飯豊山神社6:45-7:00〜飯豊山7:15-??〜
  御西小屋8:45-9:00〜大日岳10:10-35〜御西小屋11:35-55〜
  烏帽子岳2:55-3:00〜梅花皮岳3:20〜梅花皮小屋3:40

 小屋を出発して今日は飯豊山、大日岳を目指す。今日も雪面の上を何度か歩くが、早朝出発のためもあり、とても気持ちがよい。ほとんどの人がPHで身軽な中、羨ましく見送りながら相変わらずのっしのっしと登っていく。ヒナウスユキソウなど様々なお花がせめてもの慰めだ。2時間位かけて飯豊山神社に到着。三国岳からこちらは既に山形と新潟の県境なのだが地図をよく見ると県境線が御西小屋まで二本ある。?これは神社所有の土地で、福島県なのだそうな。それにも増して驚いたことに、青木さんが厄除けのお守りを購入、やはり人の子だった。山頂は今まで歩いてきた道これから行く道全てが見渡せる。この日丁度百名山を短期で踏破するという、ヒマラヤなどを登って有名な登山家がいたそうだ。もう30分早く着いていたら会えましたよという感激した声を聞きながら指さす方を見ると、下山する姿が見えた。奥さんも一緒で、NHKの取材も兼ねていたそうだ。

 御西小屋まではなだらかで、チングルマ、ニッコウキスゲなどがまだ咲いていた。

 御西小屋に荷物を置いて、大日岳をピストン。始めはなだらかで、色とりどりの花を楽しんでいたが、山頂直下はちょっと登りがきつい。飯豊山の最高峰なのでここはやはり避けては通れない。気分良く見回しながらひと休みして再び御西へ戻る。水場は往復30分はかかるので行く道の雪渓をつめて解かす事にした。既に暑くなっていたので、この雪渓をかじったり、手に握りしめて暑さを紛らわしたり。雪がかなり残っていたのは私にとって幸せだった。

 尾根続きは歩きやすかった。こんな山の上にいくつか池が残っていたが不思議な気がする。雪渓の上を通ってくる風がこの日も爽やかだった。

 烏帽子岳の登りが少々きつく感じたくらいか?もう梅花皮(かいらぎ)小屋につくとばかり思いこんでいたらもう一回梅花皮岳が残っていて、やっと乗り越えて小屋が目の前に見えたときは嬉しかった。テン場は狭かったし、小屋の中にあるトイレは1個だけで良くなかったが、水場はふんだんに天然水が出ていて、冷たくて気持ちよかった。奮発して一缶千円なりのロング缶を冷やして麦島さんと分け合ったのはいうまでもない。体を拭くこともできたし、何回も顔を洗って気持ちよかったし、その夜のウナギは美味しかったし、何より元気が充分残っているのが嬉しかった。

 食器を洗うときに思い掛けなく離れた雪渓の上を熊が歩いているのを目撃。初めてのことで感激した。安心して見ていられる場所で良かった。

3日目(8/7)
 梅花皮岳小屋5:00〜北股岳5:25-45〜門内岳6:25-50〜
  地神山7:30-55〜地神北峰8:15〜頼母木山8:40〜大石山9:40〜
  鉾立山10:40-45〜杁差小屋11:30(泊)

 昨夜よりは幾分暖かいテント内で3時過ぎに目覚め、もそもそと食事の支度を始める。それでも昨日、一昨日のハードな行程や、沢山の雪渓、その上を歩く熊、春夏秋混同に咲く花々など思い掛けない光景を思い出してはその話題に自然と三人の顔に笑みが浮かぶ。梅花皮(かいらぎ)小屋の水場は近く、冷たくて美味しい。水筒にたっぷりつめて出発する頃には朝日が顔を覗かせ、山間に見事な雲海が広がっていた。溜息が出るほど美しい。この雲海の下には大雪渓があり、昨日もここから直登してきた人が何人かいた。6時間くらいかかったそうだがその時の残雪状態により所要時間が異なるそうなので要注意。

 30分足らずで着いた北股山頂は360度の展望。北は朝日連峰から蔵王まで、東から南にかけては今回歩いてきた飯豊の山並み、そして西は残念ながら雲で見えなかったが日本海が広がり佐渡まで見えるそうだ。百名山でないのが惜しい。今日も快晴。これから歩くコースを目で辿ればなだらかな丘陵地帯に見える。最後のピーク杁差岳はまだ遥か彼方だ。本当に半日で行き着くのだろうかと半信半疑で又歩き出す。両脇には絶え間なくお花畑が続き、驚いたことに早くも秋草のマツムシソウが咲き始めていた。  

 40分ほどで門内岳に着くと小屋では水がポンプアップされている。高校生らしき数人のパーテイをやり過ごしてから後に続くが、やがて梶川尾根へと下りる分岐に着き、そこで彼等とは別れる。高校生のパーテイに追いついてしまうほどに私達のペースは速かったのかと驚いたが、確かに1時間15分という地図のコースタイムよりはるかに早い40分で次のピークの地神山に着いてしまった。ここだけに限らずほとんどが早めのコースタイム。朝の涼しい時間帯に歩いたせいもあるが、7時半だというのにこの日は既に昨日の同じ時間より暑くなっていた。ちんまりした地神山の山頂で休んでいると60代くらいの男性二人が逆方向から登ってきたが、全行程を通して家族連れも多い。一見歩きやすい山並みかとも思えるが、一雨降れば手足を使った四輪駆動と化しても進むに難儀な場所はいくらでもあった。全日程好天だったのは幸いだった。

 20分ほど下って丸森尾根への分岐を通過し、頼母木山へ向かうコースには今まで以上に多種類のお花畑で甘い香りが続く。期待のイイデリンドウもいっぱい咲いている。頼母木小屋は水が引いてあり冷たいビールを売っている。横目で通り過ぎるのは辛かったが、有料(値は決まっていない)といえど、ここの水を飲まなかったのは失敗だったようだ。とにかくうまかったと聞く。 

 大石山頂の強い陽射しを避け、木陰を求めて下り、一休みしてから見るからに急登の鉾立山を目指す。案の定きつい。しかも暑い。それが青木さんには快感だったようだが厳しさを求める人には格好の登りかもしれない。

 杁差岳にはお昼前に到着。もう少し時期が早かったらニッコウキスゲで山は黄色く染まっていたようだがもう数は少なかった。無人だが小屋はきれい。雪渓がここもかなり残ってて、水場まで行くのがかなり大変だ。平気な顔で下りて行く青木さんはさすが自然児!感服。麦島さんの強い希望で予定を変更、ここにキャンプと決まった。当初残り時間を持て余したが、山頂で菩薩様のように丸い虹がかかったブロッケン現象を体験。夕方の雲海はその動きをじっくり眺められ、飯豊連峰山頂の谷間にかかるナイアガラの滝のような雲も素晴らしい眺めだった。夜は満天の星に、柄杓は?夏の大三角は?と捜し求めているとアッという間の流れ星。願いを唱える間など…。新潟の夜景にもう明日は下山かと思いつつ眠りについた。     

4日目(8/8)
 杁差岳4:55〜前杁差岳5:20〜千本峰5:55-6:15〜カモス頭7:03〜
  第二橋7:50-8:10〜第一橋8:40〜大石ダム10:45

 山頂でゆっくりご来光を仰いでから下山。湿原があったがお花はほとんど終わっていた。早朝の風は氷室にいるような涼しさで、とても気持ちよかった。天候の崩れかと青木さんが心配したが、晴天は今日も続いた。テンを見たという青木さんの声に驚いて側に駆け寄ると今度は麦島さんの奇声!樹の大きな空洞に何やら生き物がいる。カメラを向けるが深く潜って出てこない。覗くと怯えた目とちっちゃな頭が忙しげに動いている。可哀想になったので私達はあきらめて木から離れた。驚かせてごめんね。深く豊かな自然の中に足を踏み入れている罪をふと思った。4時間アップダウンや急降下を繰り返し、ようやく林道に出るといきなりブヨの大群に取り囲まれた。ここで青木さんの指示通り用意してきた装束を身にまとう。防虫ネット、長袖、軍手、香取線香といういでたちに、すれ違う登山者は「用意がいいですね」と声をかけてきた。今回の用意周到さはリーダーのお陰だ。まさに山の会報八月号の“知って得するコーナー”を実践。防虫スプレーは全く効果が無かったような気がする。

 三日間かけて歩き続けた飯豊連峰もこうして6時間足らずで駆けるように下りてしまった。  

 百円の温泉できれいになった後、食事。特急から上越新幹線に乗り継いで2時間足らずで着いた東京駅、まるでタイムカプセルの世界だ。