中央線沿線 ;  陣馬山
(じんばさん)

冬枯れの雪道


 H9.1.21(火) 当日発 ; Member.計2名

藤野駅8:06発〜和田8:30〜陣馬山頂11:00-12:30〜明王峠1:30〜相模湖駅


 春の陣馬はよく行くが、冬は初めてだ。雪があったとしてもたいしたことはないだろうと思いつつ、軽アイゼンとスパッツはザックに入れていく。

 慣れた山だから歩ければ高尾までの縦走、無理ならどこからでもエスケープできるから、気楽な気持ちで歩ける。バスの終点和田まで行くこととし、車窓から陣馬の里を眺めていると茶畑を数匹の猿の群が横切っていた。

   バスを降り、準備を整えて出発。年輩のおばさんグループが一緒になった。中には山なれた人がいるらしく、会話の中に著名な山の名前がぽんぽん出ていたっけ。彼女たちの装備は万全だ。

 彼女らを先に見送り、既に雪で凍てついた車道を5分ほど歩いていくと登山道入口とはっきり書かれた標識が現れる。しかし、そのまま行くと、よその家に入っていってしまうのではないかと思うほど、およそ登山口らしくない。しかもコンクリートで固められたその道は積雪が凍っていてとても歩きにくい。手すりのついているのが助かる。滑らないよう気をつけて登っていくと、まもなく山道になり、ほっとする。遠くに猿の声が聞こえる。耳を澄ますが鳥の鳴き声は聞こえない。

 樹林帯は落葉しているものの、よく見ればすでに緑の芽が吹き出している。ここはもう、春が始まっている。

 ゆったりとした足どりで登っていると携帯が鳴った。登っている途中で鳴るなんて、八王子はやはり東京だと変に納得して「もしもし」。家の近くの友人からだった。「今どこなのー」と明るい声が響いてくる。「今、陣馬」と答えると「どうせ山だと思ったけどねー」と返ってくる。思いがけないTELは楽しかったが、同行者はきっと驚いたことだろう。山には都会の喧噪から逃れて来ているようなところもあるのに、文明の利器をこんな所で持ち出されては、迷惑千万といったところだ。もちろんこんな事を言われたわけではない。私にとってはいざというときのための所持品で、けっしてコミュニケーションをとる手段ではないのだが、電話をかける方はそんなことを知る由もない。

 山頂に近づくにつれ曇り空になってきた。なだらかな山頂は雪が解けて道がグチョグチョしている。残念ながら富士山は見えなかった。見えたらここは素晴らしいのに…。

 写真を撮って、少し早かったが用意してくれたうどんでお昼にすることにした。そして甘酒もご馳走していただくことになっていたのだが、なんと、本格的に酒粕とお砂糖を持ってきて下さって、びっくり。山頂で甘酒を作って戴くなんて、なんという贅沢だろう。嬉しくなってしまう。うどんはその場で食べ、体が温まってとても美味しかった。あいにく風が強くなってきたので荷物を片づけ、風をよける場所に移動。甘酒はそこでじっくり味わった。お腹のそこにしみわたるおいしさとあたたかさ。たまらない。山頂から行く先を見渡すとずっと雪道が続いている。平日の割には人が多い。

 私達も腰を上げ先に進む。寒くなってきたし、風も強いので当初の予定を変更し、明王峠から下山することにした。峠までは約1時間。尾根道なので、話しながら歩いているとアッという間に着いてしまう。そこで写真を撮り、少し休んでから下山。途中樹間から見える相模湖の水面が太陽の光に輝いて美しい。以前もここを通ったときそう思った。

 途中見晴らしの良い休憩場があり、ちょうどその場にいた方に「あそこに見える三角の姿の良い山は何ですか」と聞かれた。地図で確認すると丹沢の大室山だ。前回菜畑山から大きく見えた大室山が、ここからも形の良い姿を見せてくれていた。知り合いに出会ったような気分の良さだ。そこの展望を最後に相模湖駅へと向かった。

”思い出は陣馬の山に重なりて楽しくもあり哀しくもあり”
”お日様の隠れし中を下山せば相模湖強く光かがよう”