富士周辺; 三ツ峠山
(みつとうげやま)
ショートコースの三ツ峠 へ(三ツ峠 は2回目)

 H6年5月13日(金)当日発 ;
 Member.計4名

 【コース】(=は乗り物、〜は歩き)
立川駅6:45発=大月駅7:51発=富士急行、河口湖駅8:43着=(タクシー)=三ツ峠 登山口9:15-20〜四季楽園山小屋11:15〜三ツ峠 山頂(1786.1m)11:25〜四季楽園山小屋11:30-12:25〜八十八大師(1600m)13:20〜達磨石(1000m)15:00〜三ツ峠 駅(600m)16:00着16:19発=(富士急)=大月駅16:55発=(中央本線)=立川駅18:21発


 13日の金曜日だからといって、何を気にすることがあったろう。敢えて憂いを振り払って意気揚々と家を飛び出した。昨日の雨に引き替え、今朝は快晴無風、穏やかな気持ちのよいお天気だった。5時40分に家を出る頃には陽も高く上がり、真っ暗だった冬の時とは打って変わって通りには掃除する人の姿が目立った。この平日ザック姿の私は否応無しに好奇の目を向けられる。そこを自転車で疾走して記録的なタイム、10分で駅に到着。残金少ないオレンジカードで手間取り、危うく乗り遅れそうになったが無事乗車。

 立川で四人顔を合わせ会話は弾む。緑濃い中央線の車窓から桐や藤、ミズキの花が見える。そして車内には…の花?。

 大月で切符の高い富士急行に乗り換え、大きくなってきた富士山に目を向けながら、なおもおしゃべりを楽しむ。話しながらも昨年7月下旬に、今回の三ツ峠 に登ったときのことを思い出していた。初秋に行ったと勘違いしていたが、夏の盛りに行っていたことになる。

 今回は河口湖駅からタクシーで三ツ峠登山口まで行き裏三ツ峠コースを登った。1時間半の所をゆっくり歩いたが、それでも約2時間で山頂に着くというとっても楽なコースだった。ここも全体にタチツボスミレが溢れていた。ヤブレガサだとばかり思っていたら、ヤマタイミンガサというそっくりさんがまず現われてびっくり。ヤマタイミンガサには白い毛がある事と、葉の切れ方が違うそうだ。タクシーでかなり高いところまで登っていた事も忘れて、いきなりマイヅルソウがあったのにも驚いた。もうつぼみを用意しているものもあった。カラマツの芽吹きがとってもさわやかだった。蕎麦粒に登った時、食事した一杯水の所でのそれを思い出す。コマッタナ!最初の印象というものはこんなにも鮮明に後まで引きづるものか。これではこの山の印象が薄れるではないか…。

 タイヤチェーン付きのジープがよじ登る広い山道を、それでも高山性の植物に励まされながら登って行った。沿道にはマイヅルソウの傍に小さいコウモリソウもあった。そして初めて見るタデ科のクリンユキフデ(九輪雪筆)。ヤマザクラも終わっていたがフジザクラ(マメザクラ)が下を向いて、とってもきれいに咲いていた。

 上りはヒガラ、ミソサザイ、ツツドリ、ヤマガラ、コルリ、ウグイスなど涼やかなさえずりを聞かせてくれていたが、途中目の前にヒガラが無心に餌を啄んでいるところに出会った。忙しそうに動き回って、近くにいる私たちに全く気が付かない。きっと雛に運んでいるのだろうという事で、その様子を飛び立つまでずっと見ていた。言葉はいらない、只々心打たれる。

 5月といえども花は意外に少ない。上りは上記の他にウラジロイチゴ、ワチガイソウ、ミヤマエンレイソウ(シロバナエンレイソウ)等の白い花とイワキンバイの黄色い花が目についた位。山頂近辺のミネザクラも薄いピンクで美しかった。

 山頂からの富士山は、まだ白雪をかぶっている頭だけ見せて、雲で姿を隠してしまっていた。三つ峠からの富士山は近すぎて大きすぎる。こうして少し姿を隠して、私たちに美しく見せてくれたのかもしれない。少し下の小屋のテーブルで食事。ビールを売っている為みんなで乾杯したが、先生と森さんは少ししか飲まなかった。その為山頂で飲むにしては私は多すぎてしまった。

 下山は表口コースをとった。以前上りで来たコースだ。下り始めてぱっと目についたのはエイザンスミレだった。今日の日に合わせてくれたかのような、ちょうど見頃の色合いと開き加減。しばし足を止めて見入った。岩肌の湿ったところにもう見ることもないと思っていたイワボタン、ネコノメソウがあって、そばのワチガイソウも思わずハナネコノメではないかと一瞬胸を踊らせてしまった。残念ながら今年はハナネコノメを見損なってしまった。

 イワキンバイに混じってキスミレが咲いていた。初めてお目にかかるキバナノコマノツメだった。良く見なければ全部イワキンバイと思ってしまっただろう。本来はもう少し高山に咲くものだそうだ。思いがけない貴重な花を見れてとても得した気分。

 最初の急坂を過ぎればしばらくは緩やかなスロープが続く。岩肌は断崖でロッククライミング練習場などあるが、その手前に私達くらいの年齢の女性が上りの途中で休憩していた。立ち止まって話しかけていた時、メンバーの一人がつまづいたらしく、もう少しで谷側に落ちそうになった。休んでいたその女性の小さな悲鳴と、とっさに手を出したのが一瞬の出来事だった。幸い踏みとどまってほっとしたが、もし間に合わなかったら…大変なことになっていただろう。13日の金曜日、無事でよかった。

 再び石がゴロゴロの急坂になって、八十八大師と達磨石を目処に歩く。意外と長いなと感じ出した頃、イカリソウが1本現われた。こうして要所要所に優しい花があると、やはり心が和む。

 達磨石を通りすぎて三つ峠駅へと向かう舗装道沿いに、立派な公園が出来ていた。昨年はなかった。木のベンチにまだカバーがかかっていたからこの夏オープンなのだろう。山頂のビールの後遺症でこの頃は少々頭が痛くなってきていた。

 駅ではあまり待たず、座って行けた。大月で乗り換えまでの30分程は皆さんに悪いと思ったが眠らせてもらった。お陰で中央線に乗り換えたときは気分がすっきり。四人のボックスに座れたのでいつもの調子に戻って楽しく話せた。

 いろいろあったが凶日といわれるこの日、無事に終わってよかった。他に敢えて付け足せば、一人が行きに財布を落とした事や上りの途中ジャンパーを忘れてきてしまった事、一人がカメラを忘れたと思って買ったら帰りの車中で持ってきたことに気がついた事等も、厄日だったと言えるかもしれない。それらが厄避けになったのかもしれないが。・・・結局13日金曜日を気にしているのかな?

 今回24,000歩。

       “追憶に芽吹く初夏の三ツ峠富士も雲間に頭出しおり”

       “キンバイに紛れてキバナノコマノツメすみれと言わず姿隠すや”

       “子が為に餌啄んで啄んでヒガラの姿優しく哀し”

       “タチツボの皆寄りて咲く岩肌に暑き日射しの輝きてあり”

       “ひとむらのエイザンスミレ目に入りぬ足休めよと言うが如しに”

(ビデオ収録)
 ヤマタイミンガサ、マイヅルソウ、コウモリソウ、ヤグルマソウ、イタヤカエデ、アサノハカエデ、クルマバツクバネソウ、ニワトコ、フジザクラ(マメザクラ)、ウラジロイチゴ、ワチガイソウ、ヒロハマユミ、ウスバサイシン(カンアオイ科)、オオカメノキ(ムシカリ)、イワカガミ、ナガバノスミレサイシン、クリンユキフデ(タデ科)、ユキザサ、ミヤマエンレイソウ(シロバナエンレイソウ)、モリイチゴ(ミヤマイチゴ)、シラビソ、ルイヨウボタン(メギ科)、イワキンバイ、ミネザクラ、マルバダケブキ、トウヒ、エイザンスミレ、ウツギ、シモツケ、イワボタン、ハンショウヅル(クレマチス)、イワベンケイ、タチツボスミレ、ツルネコノメソウ、キバナノコマノツメ、ヤブレガサ、ノバラ、ミツバアケビ、ナツツバキ、カジカカエデ(対性)、ヤマヨツバムグラ、イカリソウ、センノキ(ハリギリ)、ツクバネウツギ、キヌタソウ、ウリカエデ、ミツバウツギ(植林して食用にした)、ツルコウゾ(繊維強い)、ヅミ(バラ科)