御坂山塊 ;  菜畑山〜朝日山
(なばたけうら〜あさひやま)

道志の山に魅せられて〜新年会山行〜


 H9.1.16(木) 前夜発 ; Member.計3名

曙橋(養豚場)7:45発〜菜畑山9:25-40〜ブドウ岩ノ頭10:55〜
岩戸ノ峰11:50-1:10〜朝日山2:00〜竹之本4:00(4:05発バス)〜
曙橋4:20着〜養豚場4:40


 菰釣山での忘年山行をしたのは、ほんのひと月前の昨年末。どっちを向いても山山山…。菜畑山(なばたけうら)はそんな中の一つだった。これといった特徴のない、平凡な山の連なりに在していたが、その名にどことなく惹かれた。そして今回の新年会山行と相成った。

 当日発ではゆとりあるコースタイムがとれないため、前夜発にした。夜半にテン場を捜す事となったが、あてにしていたオートキャンプ場は雪におおわれて、ことごとく冬季閉鎖。道志の湯の駐車場の片隅にテントを張らせていただいた。他二人はスリーシーズン用のシュラフだった。毛布も持ってきたにも関わらず夜中結構冷えたようだ。やはり冬季用が必要。

 6時起床。おでんとコーヒーで体を温め、テントをたたんで出発。養豚場まで車で入り、歩き出したのは7時45分。地図上で見たよりはるかに先まで林道が整備されている。PHで雪のない時期ならば、車でかなり上まで登ってこれる。その辺りは既に5〜10センチほどの積雪で、四駆といえども養豚場に置いてきて正解だった。しかも今回は縦走だ。車であまり上まで行ってしまっては戻ってくるときが辛い。歩くにはつまらない道だ。滑りやすい路面に注意しながらゆっくり行く。

 登山口にたどり着けば山頂までは近い。昨日の休日に何人か入っているようだ、しっかりトレースがついている。今の所アイゼンは必要ない。背後に真っ白い富士山と、大きく見える大室山・加入道山を時折振り返り眺めつつ登っていくと、40分ほどで到着する。

 けっこう簡単な山なんだと思ってしまう。その割に展望は良好だ。天気に恵まれたせいもあるが、富士山を始め道志や丹沢、中央線沿いの山々が一望できて美しい。

 再び富士山を背に歩き出す。人の踏みあとは減っている。積雪10〜20センチはあり、動物の足跡がいくつかあらわれてきた。我々の他には人一人いない。落葉樹の中へ遠慮なく射し込む太陽が雪面に輝いている。

 菜畑山を、登った以上に下りたのではないかと思うほど一気に下った。同じ山の連なりに見えた山塊が、実は予想を裏切るアップダウンだった。ブドウ岩ノ頭、岩戸ノ峰の登りは直登で、しかも急登だ。幸い南面で雪がなかったが、アキレス腱やらふくらはぎの筋肉がキキーンと伸びきってしまうのではないかと思うほどきつい、が爽快でもある。甘く見ていた山が充分楽しめる山だと思ったのはこんな時だった。

 夏は樹林が邪魔をし、笹薮がうるさくて視界もあまり期待できないだろう。鳳凰や、八ヶ岳、秩父方面など北西の山々が垣間見えたのは、この時期の樹間なればこそだ。

 岩戸ノ峰でゆっくり昼食。先ずは焼酎のお湯割りで乾杯し、うどんやおしるこ、リンゴにコーヒーと、持ち寄ったもので山行の楽しみを分かつ。終始変わらず風一つなく穏やかな陽気だったので快適だった。

 軽くなった荷物を背負い、膨らんだお腹を持て余しながら先に進むと、雪は30センチくらい積もっている。途中立ち止まって景色に見入っているとガサガサという音がして振り返った。犬でしょうと言う渋谷さんの言葉を鵜呑みにして見ていたら、なんと猪だった。真っ黒な大きな猪で、私達を認めると慌てて方向を変えて下へ逃げていってしまった。驚いたのは私達だ。初めて見る野生の猪に興奮冷めやらず、「熊かと思った」と山上さんが言えば、「こっちに向かってこなくて良かった」と私。目がテンになっている渋谷さんには「美味しそうに見えましたか」と問うて大笑い。

 朝日山への登りは積雪があってかえって登りやすかった。もう一つ赤鞍ヶ岳のピークを踏む予定だったが、時間的に無理と判断し、木々の合間から山々を地図で確認したあと下山した。とうとう誰にも行き会わなかった。そしてアイゼンも使わなかった。

 運良くバスに間に合い、曙橋まで戻ることができたが、案の定そこから養豚場に置いてある車の所まで登って行くのはしんどかった。

 思った以上に楽しめたと皆、満足の面もちで道志の湯へ。疲労感もまた心地よく、汗を流して、最後の楽しみを締めくくった。

”陽を受けて菜畑山より見る富士は道志の中に輝きて在り”
”静けさを求めて歩む雪山に黒き猪ぬっといで行く”