日光赤薙山〜女峰山〜帝釈山〜小真名子山〜大真名子山
(あかなぎさん2010.3m〜にょほうさん2463.5m〜たいしゃくさん2455m〜こまなごさん2322.9〜おおまなごさん2375.4m)
 霧降高原はニッコウキスゲが真っ盛り、だったけど・・・。 夏山トレーニングでテント装備の縦走

 H14年7月13-14日(土日)
  天気;13日晴れのち曇りのち雨
      14日曇りのち晴れ
  Member.2人(夫婦)

   【女峰山(左端は帝釈山):大真名子山頂より】右

 【コ ー ス 】
(〜は歩、休憩時間含む)

一日目(7/13)
霧降高原避難小屋(入山届け)9:45〜キスゲ平10:35-50〜赤薙山12:20〜昼食12:30-13:00〜赤薙奥社跡13:55-14:15〜一里ヶ曽根15:05-30〜水場分岐15:40〜女峰山17:05-10〜唐沢小屋(避難小屋泊)17:40
(所要時間約8時間・・休憩含む)

二日目(7/14)
唐沢小屋5:50〜女峰山6:38-50〜帝釈山7:31〜富士見峠8:20-45〜小真名子山9:40-10:05〜鷹の巣10:33〜大真名子山11:45-12:07〜志津林道13:00
(所要時間約7時間10分・・休憩含む)


 女峰山から大真名子山は、6年ほど前に男体山を歩いたときから気になっていた山並みだった。しかし行く機会がないまま、今年は近くの皇海山や太郎山、尾瀬燧ヶ岳など歩き、その存在を意識していた。特に太郎山へ登ったときは、それぞれの高低差を目の前に見て、思ったより大変そうだという印象を受けていた。

 そして今回、いよいよ夏山トレーニングとして登ることになった。まさにニッコウキスゲの開花時期だったので、霧降高原から登ることにしたが、下山路をはじめ夫から何かとクレームがついた。コース的に電車を考えていたのだが、夫は車がよかったらしい。始発バスの時間から逆算して当日朝発にしたのだが、夫は前夜発にして当日涼しいうちに歩き出したいと言う。一番駄々をこねたのは下山路だった。2時間に及ぶ長い志津林道を最後に歩くのが嫌だというのである。目的が夏山トレーニングなのに、何という我が儘!とあきれつつ、それならここは夫がいないときに行こうと諦めかけていた。ところがこうして一度自己主張をすれば、気が済むのが夫!結局そこでいいよ、ということで、行くことになった。これが前日の金曜日一日の出来事だった。

【一日目(7/13)】
 朝4時に起きて、5時の始発に乗車。電車を乗り継いで浅草発東武日光行きに乗った。この路線は東京から栃木まで行くにも関わらず、交通費の安いのが助かる。自宅を出てから乗り継いで終点の東武日光駅まで片道1760円。パスネット一枚で通過できるので、乗り換えのタイムロスもない。

 東武日光駅から霧降高原まで始発のバスに乗車。トレーニングのため、今回それぞれのザックは約20キロ。公共交通機関はこの点移動が大変だ。

 霧降高原の広い駐車場から登山口へと登り、リフト乗り場を通過して、途中トイレを済ませ、高原ハウスの方へと進む。観光客が多く、殆どが小さなナップザックの中、大きなザックなものだから目につくらしく、何人かにいろいろと声をかけられた。同じくらいの年代の人から「失礼ですが、おいくつ?」と無遠慮な質問もくる。

 高原ハウスがどの建物か分からないままに避難小屋と書かれた建物に入っていくとクーラーが利いていて気持ちがいい。そこで入山届けを提出し、既にカラカラの喉を潤してから外へでた。暑い!

左【フェンス越しのニッコウキスゲ】

 長蛇のリフト乗り場を通過して登山道へと進むがそこから見上げるとニッコウキスゲがいっぱい咲いているようだった。楽しみに登山道を行くが、これが残念なことにニッコウキスゲとは無縁の樹林帯。暑さと、久々の重い荷物に早くも音をあげながら登っていった。リフト側とは鹿の防護柵?で遮断され、キスゲ平近くでその隙間からわずかに眺められた程度だった。リフトに乗った人はその見事な開花を充分楽しんだそうだから、やはりタダでは見られないのかとがっかり。

左【キスゲ平より赤薙山へ】

 キスゲ平では多くのハイカーがおり、そこから丸山に行く人や赤薙山へ行く人もいた。私たちは赤薙山へと向かう。クマザサだろうか、それに覆われた山の斜面は美しい。コメツツジ?が所々に咲いていた。むかしはニッコウキスゲがもっといっぱい咲いていたようだが、殆どが鹿に食べられてしまったそうだ。トンボが沢山飛んでいた。強かった日射しは次第に霧に変わり、目指す赤薙山山頂は隠れてしまった。しかし今回はこの方が有り難かった。霧降という名のごとく、この辺りは霧が多いのだろう。涼風が心地よく、ゆっくりと登っていった。登る人の殆どが赤薙山までだったが、休んでいるとき話した単独女性がやはり女峰山まで行くということで、所々で一緒になった。クマザサの稜線からツガの樹林帯へと入り、木の根のむき出した登山道は縦横に広がっていた。

 ようやく赤薙山山頂。樹林帯の中にある狭い山頂に人が多い。しかしちょっと様子が変だと思ったら、女の子(小学高学年か中学生くらい)が火傷をしたという。ポットのお湯か、そこで湧かしたお湯か分からないが、足を冷やしていた。薬を持っていたので言ってみたが、すでに他の人から貰ってつけたという。半べそをかいて震えていた。側で母親が抱きかかえるようにしており、父親は携帯をかけているようだった。周囲の状況からヘリコプターを待っているらしい。携帯で要請したのだろう。しかしどう見てもそこは樹林に囲まれた狭い山頂でヘリでの救助は困難に思われた。背負うには重いかもしれないが、おんぶして下りるか、ゆっくりでも本人に歩いて貰った方がよさそうだ。通常でも50分も下れば幸いなことにリフトがある。

 あとから聞いて分かったことだが、この時既に火傷をしてから3時間以上経過していたそうだ。側に水の入れ物も置いてあったが、足をつけておける状態ではなかった。詳細な部位も火傷の程度も分からなかったが、 おそらくは少しでも早くと思って要請したヘリが、予想以上に時間かかったのではないだろうか。その場で私たちに出来ることはなさそうだったので、少し先に行って昼食にした。

 途中、ヘリの音が聞こえていたが、あとから唐沢小屋で一緒になった人の話によると、ヘリが来たものの、やはり救助は難しく、警察から何とか自力下山できないかと言われたという。結局シートなどで体を包み、下山に向かったということだった。火傷も山ですれば、負傷と同じく大変なことだと目の当たりに見て感じた次第。

左【ベニサラサドウダン】

 その先は登りが大変だったが、足下にはゴゼンタチバナの花が沢山見られ、ベニサラサドウダンや石楠花もあって、楽しめた。そして奥社跡に到着。ここで朝6時に登ってもう女峰山まで行って来たという年輩のご夫婦が戻ってきた。この人たちも少女の火傷のことは知っていて、どうなったかと気にかけていた。赤薙山山頂には小さな鳥居があって、その奥に石の小さな祠があったが、この奥社跡にはなにもなかった。しかしこちらの方が広かった。

左【奥社で】

 ゆっくり休んだ後、再び出発。次のピーク一里ヶ曽根に着くと先行していた先ほどの単独女性がいた。そしてその人のとは違うザックがハイマツの側に置かれていた。ここに荷をおいて女峰山を目指した人のものだろう。行く手の山並みが眺められた。女峰山のピークはここからはまだ見えないようだ。既に3時、夫の気力の限界で、ここからが大変になる。ここでもテントは張れそうだが、空模様が怪しい。夫が先に行くというので出ようとしたら、雨が降り出してきた。合羽とザックカバーを装着して出発。下って再び登り返すが、ピークから眺めた右手の大きな岩はいつの間にか後方になっていた。ハイマツ帯を歩き、きれいな石楠花が慰めであったが、明らかに夫がペースダウン。休み休み行くが、暑がる夫に対し、休んでいると私の方は寒くなった。多少風が強く、集中力を切らさないよう、声をかけながら進んでいった。次が山頂かなと思う頃、左下に唐沢避難小屋が見えてきた。

左【帝釈山(右)から大真名子山(左端):女峰山山頂より】

 1,2箇所、小さなテントなら張れそうなところはあったが、夫は大丈夫というのでそのまま通過。ミヤマダイコンソウの黄色い花が沢山出てきて、ようやく女峰山山頂。人は誰もいない。前方には予定している帝釈山から大真名子までの山容が、ガスの切れ目に見えた。女峰山からの下山路がヤセ尾根とあったので注意してみたが、心配するほどではなさそうだった。ただ、天気の崩れと強風がなければよいが、と思いつつ写真だけ撮って唐沢小屋の方へ行くことにした。山頂でテントを張るには良い場所がなかったし、風と雨が強くなれば小屋の方が楽だ。

 しかし、小屋へ行くまでの道は途中ガレ場があって、悪天候の時は注意が必要だ。目印はしっかりついていたので余程のガスでない限り迷う心配はないと思う。暗くなったらあぶない。

 そろそろ小屋だろうと思いながら下りていくのだが、道が右へ右へと行くばかりで小屋が見えず、通り過ぎてしまったかと気になった。しかし、そのまま行くと小屋へ出て一安心。二人用のテントが一張りあった。

左【唐沢小屋】

 小屋は手前に隙間だらけの古いままのがあってびっくりしたが、隣りにしっかりした小屋が建っていた。詰めれば30人以上は入れるだろう。毛布も少しあった。水場までは8分とあるが、トレーニングをかね、私たちは充分用意してきていたので荷をおいた後、ひとやすみ。先客は2人連れ一組と先ほどの先行女性(水場に行っていた)だけだった。このあと単独男性、そしてヘッデンをつけた男女二人連れが来て、合計8名になったが、まずは持ち上げたビールでお疲れさま(^-^)。みんなで話しながら、カレーうどんと山菜ご飯で夕食を済ます。8時頃就寝。夜間は雨と風の音がして何回か目が覚めたが、比較的ゆっくり休めた。

【二日目(7/14)】
 4時に起床。雨は止んでいた。雲の流れが早い。昨夜の天気予報では朝のうち雨が残り、のち曇りだった。気がかりは風だったが、ひとまず山頂までは行ってそこで判断することにした。下山となればまた同じ道を下ってくることになるが、その方が悔いが残らないだろう。同じルートを辿る予定だった若い男女の二人は下山することにしたという。私たちだけとなった。ラーメンとパンで朝食を済ませて出発。一晩ゆっくり眠った夫は観念?して先に登っていく。

左【女峰山山頂】

 ゆっくり登った割にはほぼコースタイムで山頂に到着。ガスっていたが、ガスの切れ目から時折周囲の山が見える程度だった。風はあったが気をつけて進むことにした。心配するほどのヤセ尾根でもない。展望がない分、足下に集中して歩ける。暑くないのが有り難かった。蒸れると思って合羽の上だけとスパッツだったのだが、濡れた木でズボンが湿ってきたため、途中で下も合羽にした。

左【クロマメノキ】

 相変わらず石楠花が多かったそしてミヤマダイコンソウ、コケモモ、クロマメノキなど、咲いていた。しっとりと昨夜の雨に濡れてキラキラしていてとてもきれい。ガスで遠くは見えないまま帝釈山に到着。そのまま通過。ここから富士見峠へと下るがこれがとことん下るという感じ。分かってはいたけれど、これじゃ縦走じゃないよ、一つ山を下ってもう一つ登る感じだよ・・・と笑いながら、下りていった。

左【富士見峠】

 富士見峠は自動車道終点と書かれた杭が打たれていた。空はすっかり青空に変わっていた。ゆっくり休んでから小真名子山に登り始める。今までは途中にツガの暗い樹林帯を下ってギンリョウソウなども見られたが、小真名子の登りはガレ場だった。ここを下るのは嫌だろうなと思った。特に先日の台風6号の通過した後であり、また昨夜の雨で、多少は荒れているのではないだろうか。以前が分からないので何ともいえないが。日射しが強くないので救われたが、じりじりと焼けるような感じだった。

左【小真名子山山頂で】

 再び樹林帯に入って間もなく山頂?と思ったそこには大きな反射板が立っていた。展望台にもなっていたが、興醒めでもあり、山頂標識もなかったのでもう少し先に行く。と、樹林帯の中に小真名子山山頂標示があった。わずかにひらけた女峰山方面に向かって座り、一休み。木があって写真を写せるような場所ではなかったが、歩いてきた稜線が一望できる。

左【ゴゼンタチバナ】

 コースタイムを切ることはなかったが、この日はほぼ順調に歩いてきている。またも下り、その途中で大きな白い犬を連れた単独の男性が登ってきた。思わず頑張れと犬に声をかけて手招きして待っていると、人なつっこくすり寄ってきて可愛かった。この日初めて出会った登山者で、この後にも他の人とは出会わなかった。鷹の巣と書かれた鞍部を通過していよいよ大真名子山の登り。日光の山は下りも登りも樹林帯の中で、展望はあまり開けていない。石楠花の木は多かったが花は少なくなっていた。というより、たまに見かける程度だった。相変わらず楽しめたのはゴゼンタチバナやミツバオウレンなどの白い小さな花。樹林はうっそうと苔むしており、一人では歩きたくないような雰囲気だ。しかし、前日はここを一人で歩いたという単独女性とすれ違っていた。

 登りの途中で一回休憩。この一回の休憩が私たちは長い。登りが苦しいと言いながら、休むたびにしっかりと飲み物とレーションを補給し、その上夫がゆっくり煙草を吸うからだ。

 そこからの登りは遅々としたものだった。最後の登りを楽しまなきゃと夫は笑っている。この登りでさっきすれ違った白い犬がもう戻って後ろについてきた。思わずびっくり。早かったね〜と声をかけ、ワンちゃんをねぎらう。ご主人様は少し後ろにいるようでその犬はしきりと後方を気にしていた。ワンちゃんたちを先に見送って、またゆっくりと登っていった。

左【大真名子山山頂で】

 山頂に近づいたかなと思ってから、なだらかな散策をしばらく楽しんだ。その頃は眺めがよく、歩いてきた女峰山からの稜線が一望できる。最後の登りを詰めるとやっと山頂。先ほどの男性とワンちゃんが休憩していた。写真を写してあげましょうと声をかけていただいてワンちゃんも一緒にハイ、ポーズ、あら?じっとしていない(^-^)

 ここからの展望はやや木に邪魔されていたが、見晴らしは良かった。立像があり、ちょっと面白い山頂だった。すっきりと晴れていれば遠くの福島、新潟方面の山並みもきれいに見えるそうだがこの日はボヤッとして、遠望はイマイチだった。この時、その人が志津林道の乗越まで車で来ているので、車に乗せてくれることになった。喜んだのは夫(私も)。急いでパンと飲み物でお昼をすませ、一生懸命下りていった。

左【志津乗越】

 こちらはいくつか鉄梯子と鎖があり、そこでその犬はウロウロ。やはり苦手らしい。それにしてもよくこんなところを登ってきたものだと驚いた。登りの方が楽に登れたのだろうか?汗がにじみ出るほどのスピードで下山し、コースタイム1時間半のところをなんと50分で下りてしまった。今回の新記録。2時間もの志津林道を歩かないで済むと思った途端、必死になって、その軽快な男性についていった結果だった。何とも現金な私たち(特に夫!いままでの亀の歩みは何だったのか?(-.-;)

 結局中禅寺温泉まで乗せて貰った。その間その男性といろいろ話をしたが、山歩きはもちろん、クライミングから沢登りなどなんでも一年中楽しんでいるということだった。私たちよりはるかに年輩に見受けられたが、若い頃からやっていたそうだ。7キロのジョギングや50mの階段の上り下り20回など、毎日のトレーニングも欠かさないと言っていた。なるほど・・と納得。中禅寺温泉で降ろして貰い、手渡そうとしたお礼も固辞されて、その人と別れた。

 このあと日帰りの露天風呂に入り、食事をとってからバス停へ。本数が少ないので時間は予め調べておいたのだが、バスは満員で、後続車をお待ち下さいというアナウンス。間もなく来たバスに座れて東武日光駅へ。

 電車の発車まで15分ほどあったがすでにいっぱい人が並んでいた。何とか座れて20時半前には帰宅。もし志津林道を歩いたら(それでも温泉には入る予定だったので)、夜半近かっただろう。大助かりだった。