南ア周辺 ;  入笠山
(にゅうがさやま)

360度のパノラマを楽しむ


 H9.2.6(木)当日発 ; Member.計2名

新宿駅7:00発あずさ〜甲府駅8:26着8:54始発〜富士見駅9:51着〜(タクシー)〜
パノラマスキー場駐車場〜(ゴンドラ8分)〜山頂駅10:40出発〜入笠湿原山彦荘11:00〜
マナスル山荘11:15〜入笠山11:50-12:05〜少し下りた所で昼食12:15-13:10〜
マナスル山荘13:30〜山頂駅14:05着〜(ゴンドラ8分)〜パノラマスキー場駐車場〜
(タクシー)〜富士見駅15:23発あずさ〜新宿駅17:36着


 初心者でも登れる雪山で、しかも360度の展望が得られるとあって、山上さんが興味を示した山だった。雪さえなければ山頂直下までバスが入り、手軽に登れる山だが植物が豊富な事と、やはりその展望が魅力で、私もいつか行ってみたいと思っていた山だった。まさか、雪の時期に来ることになるとは思いもしなかった。スキー場だというのも今回調べて初めて認識したくらいだ。ゴンドラでかなり高度がかせげるというのは楽だが、それでも登る楽しみは得られるのかなというためらいの気持ちもあった。スキーをする若者の間にリュックかついだオバサンが入っていくのも、なんかミスマッチ!という思いもないではなかった。ちょっとかっこわるいジャン。

 だけど天候さえよければ、ぐるりパノラマというのは捨てがたい。自分のスタイルをもった生き方を、若者の前にさらすのもまた良いではないかと開き直り、山上さんの呼びかけにのった。

 山手線の遅れで危うく乗り遅れそうになった山上さんが、7時発のあずさに飛び乗ったのは3-4分前。曇り空だったが、車窓の外に冠雪の山々が見えてくる頃には明るい陽が射し始めてきた。

 タクシー(10分弱)でスキー場駐車場へ向かい、ゴンドラの乗り場へ歩いていると、色とりどりのウエアに身を包んだ若者達が、いっぱい歩いている。6人乗りのゴンドラに、スキーやスノボーをする若者と一緒に乗り込むと、「ワー初めての経験だわ!ドキッとしちゃう!」と山上さんがとても嬉しそう。背後に連なる八ヶ岳の全容に二人で感嘆の声を上げ、こんな素敵なところでスキーを楽しむ若者は気持ちいいだろうなと、思ったところで彼等には関係ないかと思ってみたり…。

 山頂駅を降り、ゲレンデへ向かうスキーヤーを見送り私達はハイキングコースへ。そこでスパッツだけ着けて歩き始めた。歩けば暑くなると思っていたら結構寒い。

 慌ててまた上に着たが、陽が射していたので、風が無ければ暑くなるといった調子だ。

 無雪期なら車が通ると思われる道をしばらくは進み、途中ショートカットして入笠湿原へと足を踏み入れる。両脇に杭が打ってあり、道標も要所にはあるので心配はいらない。雪の多いところは1メートルはあるだろう。が、雪道に踏み跡がしっかりついている。

 湿原があるくらいだから、お花も沢山見られるのだろう。機会があったらまたその時期に来たいものだ。

 再び車道を進むとまもなくマナスル山荘に到着。無雪期の駐車場がここにはある。そこからが一応登山らしき道となるはずだが、通常30分の道のりだ。雪だし、のんびり行こうと歩き出す。雪がやわらかいので、アイゼンは着けなかった。踏み跡がついているので心配はいらないが、場所によってはズボッと膝上まで埋もれてしまう。

 八ヶ岳の全容が見られるという好位置に在って、何度も振り返りながら、あるいは横手に眺めながら、雪道を進む。もしこれがラッセルを踏むとなれば、この距離でもかなりしんどい。踏み跡を辿るだけでも近くて遠い山頂に思えた。

 やっとついた山頂は期待通りの素晴らしい眺め。天気に恵まれて良かった。八ヶ岳はもちろん霧ケ峰・美ケ原・北アルプス・中央アルプス・南アルプス・富士山と、願ってもないロケーション。中央と北は山頂がガスっていたが、天気が良ければ見えるとタクシーの運転手さんが言っていた伊那谷もはっきり見えた。行ったことが無く、私には遠い存在だった中央アルプスが、こんなに間近に見えて感激だった。誰もいない山頂。静かな山頂。山上さんと二人の声だけが響き渡る山頂で、思う存分満喫したかったが、吹きさらしの山頂は、さすがに風が冷たかった。少し下に降りて風をよけて雪の上に座ったら、陽射しが温かくぽかぽかしていた。八ヶ岳という雄大なスクリーンを見ながらの昼食はもうそれだけでご馳走だった。それも雲で隠れ始め、やがてちらちらと粉雪が舞ってきた。そんな中でのドリップコーヒー…。感動で言葉も出ない…。

 下山はあっけなかったが、僅かな間だったのにさっき歩いた跡が、風で吹きならされて、うすく消えかかっていた。こんな一瞬に、遭難がどんなものか教えられた気がした。

 おなじコースを山頂駅まで戻り、スキー客ならけが人ぐらいしか乗らないだろう、下りのゴンドラに再び乗って、思い出を胸に帰路についた。

”ゴンドラの力を借りて雪山に立てばぐるりと名峰並ぶ”
”スキー場より山を歩けば息子(こ)の声が聞こゆ気がする山はスキーだと”
”湿原に花の名教えてくれし人ああ白銀の花はまぼろし”