北八ヶ岳 ; 縞枯山〜北横岳
(しまがれやま〜きたよこだけ)

吹雪の中を行く


 H10年2月12日(木)〜13日(金)当日発 ; Member.3人 (渋谷,山上,石原)

【[八ヶ岳」北横岳より】

12日
横岳ロープウェイ山頂駅11:30〜縞枯山荘11:50ー13:15〜縞枯山15:10-25〜縞枯山荘16:00(泊)

 横岳ロープウェイに着いた時、雪は盛んに降っていた。ロープウェイをはるか見上げると、ガスがかかっている。予定は茶臼を周り込んで縞枯に行く予定だった。果たしてこの上はどうだろうか。とりあえず山荘に行って考えようと、スキー客の多いゴンドラに私達も乗り込む。この視界ではスキーも危ないなと思いつつ、風で揺れないようにおもりの積まれたゴンドラの中から外を眺めていると、「昨日はとても良いお天気でした」というアナウンスが流れる。天候は一日で変わるようだ。

 山頂駅に着いて、見通しのきかない中、旗をたよりに縞枯山荘へと歩き始める。山荘で昼食をとりながら、今日はコースを変更して、縞枯のピストンで行ってみようという事になった。

 荷物を減らしていざ出発。今回初めてもってきたワカンを着け、2本のストックを持って、風とガスの渦巻く中、三人の最後尾について歩き出す。相変わらず視界は良くない。

 雨池峠からいよいよ登りにかかる。雪は深い。1m以上はもちろんある。登り始めて間もなく先行していた一人の男性が立ち止まっていた。進めないから戻るという。見るとワカンを着けていない。私達は三人とも着けていたが、その時はその効果の程をまだ実感していなかった。今度は私達が先行していく後から、その男性がついてきたが、途中からいなくなってしまった。戻ったようだ。じきにトレースが無くなり、コースを誤った。方向を見定めて、何とかコースに戻り、先頭がラッセルしていく。見るからに大変そうだ。途中で代わり、三人で順番にラッセルしていく。大変だが私はどこか楽しんでいる所があった。山頂まで夏ならば約40分という行程を2時間近くかかった。

 山頂は樹林で囲まれて、展望は望めない。天気が良くても見通しはきかないだろう。それでも記念写真を撮り、風を避けて少し下ってひと休み。降雪と、風の音、薄暗さの中に居て、独りなら不気味だが、三人の顔は晴れやかだった。この天候では茶臼からは無理だっただろう。PHの選択は正しかったが、もしお天気なら行けたのにとちょっぴり未練が残る。縞枯の縞枯たる所以の風景も又見てみたかったのだ。でもそれには他の季節の方が良かったのかも知れない。

 下りは早かった。しかし、少し広い場所に出るともう私達のつけてきたトレースはすっかり消えていて、危うくコースを外す所だった。以前にも憶えが有るが、ほんの少しの時間でこうなる事はよくある。注意しなければいけない。

 小屋に着くと、さっき行き会った男性が休んでいた。聞くと、ワカンでラッセルした私達の後から付いてきたが、それでもなお足が10cm以上沈んで大変だったそうだ。そこで初めてワカンの威力を知ったのである。

 小屋の宿泊客は私達3人の他に単独行が各3人の計6人だった。同年輩の人、若い人、新婚さんと居て、一緒に少しアルコールを入れながら、山の話に花が咲いたのは言うまでもない。これが山小屋の良さだ。ついでに、縞枯山荘の食事は美味しい。トイレは小屋の中にあってきれいだ。

 夜中に起きた時、外は満天の星。



13日
縞枯山荘8:00〜坪庭〜北横岳9:50ー10:15〜坪庭〜 横岳ロープウェイ山頂駅12:00

 6時の朝食を済ませ、支度して北横岳に出発。外の空気はひんやりと冷たいが、期待できる天候。真っ青な空だ。私達3人の他に昨日の同年輩の男性も同行する事になった。

 ワカンをつけて歩いて行くと何やらの動物の足跡がいくつかついている。人間の歩くコースに道筋をつけているのがおかしい。

 坪庭を通ると背後に昨日歩いた縞枯山がある。足下に広がる風紋と、絶妙のコントラストだ。北横岳へはずっと指標があって、間違う事なく行ける。途中北横岳ヒュッテの人だろう、一生懸命にコースを歩きやすく整備していた。へぇー!と驚いたものだ。どうやら週末の登山客が沢山来るようだ。なるほど北八ツは初心者向きだと言われているのが頷ける。

 ずっとワカンをつけていたが、こちらは無くとも歩けたようだ。雪に囲まれた北横岳ヒュッテに荷物を置いて、山頂へと向かった。

 山頂は素晴らしい展望。言葉はいらない。これだから山は止められない、と心の中でかみしめる。空の蒼さと飛行機雲の白い筋を眺めながら、体が冷たくなる前に下山する。なんとも名残惜しい。

 営業中のヒュッテの前で、小屋主さんに断わり、山上さん自前のドリップコーヒーを飲んで温まる。

 今年の降雪は例年より少ないそうだ。いつもなら3m以上、今は2m70cmくらいだという。

 このお天気この早い時間で帰るのはもったいないようだったが、再び横岳ロープウェイに向かう。到着すると、これから登ろうとする団体が一生懸命アイゼンをつけていた。北横岳に行くと言うから、「北横岳なら必要ないですよ」とアドバイスするが、それを聞いて外す人、聞く耳持たぬ人、様々だ。まっ!自分達で判断するのが一番良い事ではある。

“時間かけ汗かき登ったラッセルを走るがごとし下るスピード”
“北八ツに登って黙り見て黙す雄々しく八ツは端然と在り”