【一日目】
年末だがせっかくの三連休、どこかへ行きたいと思いながら行き先はなかなか決まらなかった。23日は娘の用事が入っていたのでやり残した年末の仕事をし、その合間に地図を眺めていた。目に付いたのがタワ尾根! だいぶ以前から気になっていたルートだ。できれば今年の秋に紅葉を楽しみながら登りたいと思っていたが時期を逸していた。そのため無意識に年内の予定からは外されていたが、待てよ、その先には酉谷山がある。今年は酉年で2月にも一度歩いているが、締めでもう一度歩くのも悪くない!雪があれば予定は変わるかもしれないが、コース取りはどうにでもできる。とりあえず酉年だから下りは鳥屋戸尾根にするのも粋狂か!うん、これで行こう!
当日は娘を送ってからの出発となったので少し遅くなった。気に入っている酉谷避難小屋に泊まりたいが、どうなるか分からないのでいつものようにテント持参。結局使うことになる。
日本海側が雪で大荒れの中、関東の予報は晴れ。しかし奥多摩駅に着くと雪が少し舞っていた。8時30分発の東日原行きバス(450円)に乗り、走り出すと雪は本降りになってきた。隣の男性が驚いて温泉にでも切り替えようかとぼやいている。それほどいきなりの激しい降雪だった。
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歩き始めた頃は青空
川乗橋で約半数が下車、川乗山へ行く人が多いようだ。予定通りいけば明日の下山はここになるはずだが・・。終点の東日原で残り全員が下車。この時にはまた雪が小降りになっていた。泊まり装備の人は少なく、殆どが日帰りの様子。時間が遅かったので早めに出たかったが、ちょっと手間取り歩き出したのは9時20分、私たちが一番最後だった。雪はちらつく程度でもうまったく気にならない。見上げると青空が広がり、月さえ見えた。
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一石山神社
鷹ノ巣山への登山口を左に見ながら直進し、日原鍾乳洞の方に向かう。T字路で天祖山への道とは反対の右方向へ。間もなく一石山神社の階段があり登っていく。そのまま山へ続く道があるのでお参りして躊躇うことなくそちらへ。
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一石山の名のいわれ?
金袋山と書かれた小さな標識を通過する時見上げると、山自体が大きな一枚岩のようになっている。一石山の名のいわれかも知れない。 |
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登り始めは急登
登りは急だった。朝の新雪がうっすらと残り、足を滑らせないように気を遣った。雪の上に先行者の足跡はない。傾斜がきつく、ザックの重さが恨めしいほどだ。 |
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見晴台
ようやく平らな所へ出るとベンチが二つあった。見晴台と書かれているが展望が良いとはいえない。そしていくらか登りやすくなった傾斜を登りつめると籠岩の方からの道と合流し、そこにご夫婦(たぶん?)がいらした。ミズナラの巨木をみて金袋山まで行って来たという。標識は無かったと言うからその手前ではなかろうかと話しつつ、下山するというお二人と別れて先へ進む。
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一石山山頂は尾根上に
ほんの少し行くと、一石山山頂だった。尾根道の途中でピークというのではない。しかも山頂標示は蒲鉾の板のようなものに「一石山」と書かれ、木に取り付けられていただけ。気づかず通り過ぎてしまいそうだ。そこで休憩、昼食にした。一石山でこの時間(11:20-11:55)では、この日の内に酉谷山避難小屋まではまず無理だろう。
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そこからしばらくは平坦で歩きやすく、気持ちの良い尾根道が続く。
すっかり葉の落ちた落葉樹の合間には背後に鷹ノ巣山、左(西側)に天祖山へ続く尾根、右(東側)にはヨコスズ尾根が見える。新緑、紅葉の時期は素晴らしいのではないかと思われるが、こうして周囲が見渡せるも今の時期なればこそ。
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ミズナラの巨木とはいったいどんなものかと左右を探りつつ進んでいくが、やがて見まごうことなくその巨木が目に入る。なぜこの一本だけが?と驚くほど風格がある。葉の茂ったときはその重さに、冬は雪の重さに耐えられるのですか?と聞きたいほど斜めに伸びている。広々とした樹林帯の中にあっても目立つ存在だ。
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分かりやすい尾根道
そのまままっすぐ尾根へと目指す。地形図とコンパスが必要と覚悟していたが、尾根道だから間違えることもあるまいという気楽さもあった。ところが心配するまでも無く、要所にはテープが付けられていた。マイナーなルートは今やけっこう人が入っているようだ。
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拍子抜けした思いで進んでいくと少し小高いピークがあり、ここで先ほどのご夫婦の足跡は終わっていた。どうやらここを金袋山と思って引き返したらしい。
先に進むと通過途中の右手に人形山と書かれてあった(左写真)。この際アップダウンがないのは何とも嬉しい。 |
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緩やかに尚も登っていくと困ったことにトシちゃんの足が攣りだした。おいおい、またかい!様子を見ながら一休み。落ち着いてまたゆっくり歩き出す。
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金袋山も尾根道の途中にあり(左写真)。木の間から周辺を眺めつつ先に進む。しかしまたも前を歩くトシちゃんの歩き方がおかしい。「やばい、両方の足が攣り出した」また一休み。どうぞゆっくり休んでくだされ!アミノバイタルを飲んで一休みすると何とか持ち直した。またゆっくり歩き出す。この後はもう大丈夫だったが体格の割りに柔なのだ。そして梅干だとかアミノバイタルだとかで洗脳される便利な体質でもある。 |
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篶坂ノ丸も難なく通り過ぎ・・・ |
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前方に見える小高い山がウトウの頭と思いきや、登りきったその先に山頂はあった。 |
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ウトウの頭山頂
なるほどウトウという鳥の絵がきれいに描かれている山頂プレートがあった。今回の目的の一つは達せられた。ここでテント張って明日同ルートを戻ってもいいね〜なんて話しつつも、ここまできたのだからやっぱり酉谷山までは行く。 |
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ここからの道のりが手ごわかった。いままでのアップダウンのない山々で慣れていた体はいきなり緊張の連続。岩や木の根の絡まったアップダウンでその上雪がうっすらのっているものだから注意深く気をつけて進んでいく。油断すれば右も左も切れ落ちている。ただではすまない。ストックを出すより木や根に掴まりながら行く方を選んだ。アイゼンを着けた安全よりも、着けた危険の方が高いと判断。今までの尾根上とは打って変わってスリリング。 |
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尾根から一箇所少し下って捲く所もあった。そこにもテープがあり、分かるようになっている。いったいどなたがつけたものか?傾斜がきつく、その上雪があるものだから滑りやすい。このまま降りて大丈夫かと半信半疑ながら進んでいく。最早写真を撮る余裕など無かった。下ってみれば鞍部でまたテープが付いており、振り返るとなるほど大きな岩を巻いていたわけだと納得。
再び登るとやっと歩きやすくなった。このまま行けば間もなく長沢背稜だろうと思ったがタイムリミット!テント場を見つけてビバークすることにする。 |
テントを設営し、ひと段落してホッと一息。チーズをつまみに梅酒のお湯割で乾杯。温かいおでん、その残りの汁でうどんを食べるともうお腹いっぱい。疲れて6時半には就寝。忙しい師走の合間に出てきたので疲れきっていた。その晩は二人ともぐっすり。よく眠れた。
【二日目】 |
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鳥になった?トシちゃん!
翌朝は4時起床の予定だったが、寝坊して4時45分ごろ起床。ところが起きて驚いた。トシちゃんのシュラフ内側が切れて羽毛がワサワサ出てきているという。シュラフから出たとたん、テントの中は羽毛が舞い上がった。そして抜け出たトシちゃん、まるで鳥! いくら酉年でウトウの頭、酉谷山と行くからって、そこまで鳥づくしにしなくったって! 絡みつく羽毛に包まれて必死なトシちゃんを見ながら大爆笑! これが避難小屋でなくて良かった。二人だけならまだしも、誰かいたらそれこそ迷惑なことだったろう。トシちゃんが外でパタパタと払っている間にとにかくシュラフを片付けた。そして、冬用の高いシュラフなのに・・・と現実に戻る。 |
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長沢背稜へ
ラーメンで朝食を済ませテント撤収後、出発。アイスバーンが気になったので、アイゼンは初めから着けていく。風も無く穏やかな陽気だ。うっすらと朝日が広がって辺りの景色がオレンジ色に染まっていく。写真を撮りながらゆっくり進んでいくと、まもなく長沢背稜の登山道に行き当たった。今年の2月にも歩き、このタワ尾根をいつか歩きたいと思いつつ通ったのを思い出す。 |
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長沢背稜を行く
今回もピークを全部外して進むので視界といっても南方向を木の間越しに眺めるだけ。そして足を踏み外さないよう登山道ばかり見て歩くような地味な登山道だ。気温はマイナス6度だが温かく感じられた。積雪は朝日に輝いている。
途中で一人の若い男性とすれ違った。この日の内に雲取山をまわり石尾根を歩いて奥多摩駅に向かうと言う。ふぇ〜、すごい人がいるものだ。私たちなら雲取山にもう一泊だよ!明日は仕事だからどうしても帰らなければならないと言っていたが、大丈夫だったのだろうか。 |
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酉谷山へ
酉谷山の取り付きから登っていく。雪はまだ少ないので歩きやすい。しかし昨夜ゆっくり休んだにも関わらず、低血圧の私はイマイチ体がついていかない。むしろこの日はトシちゃんの方が元気がいい。 |
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富士山が見えるかと振り返りながら登っていく。途中できれいに見えて元気が出る(写真はズーム)
左(北側)の視界も広がり、遠くの白い山並みに目がいく。トシちゃんがあれは浅間山だろうとか、谷川の方だとか見当をつけている。こういう地理感覚はやはりトシちゃんの方が優れている。私は地図と照らし合わせないとわからない。それにしても落葉樹林だからこうして見えるものの、葉のある時期はきっと見えないのだろう。やはり登るなら晩秋から春先が良さそうだ。もっとも新緑や紅葉も捨てがたい。 |
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酉谷山山頂
そして約十ヶ月ぶりの山頂。この日は雲ひとつ無い青空だ。 |
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山頂でメリークリスマス
石尾根の奥にのぞく富士山を眺めながら持ち上げたケーキ(ホワイトクリスマス風?)とコーヒーでメリークリスマス! 12月25日、誰もいない山頂で二人のクリスマスなんて、なかなかロマンティック?(笑)・・・って、笑うところではありません(爆)
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鹿捕獲のチラシがかかっている
後はさっさと下るだけ。長沢背稜の登山道に戻るとそこは酉谷山避難小屋の分岐でもあり、標識には何やら書かれたものがぶら下がっていた。読むと、鹿が増えすぎ、鹿害が広がっているためH17.9/17〜H18.3/31まで猟による捕獲を実施しているという。通常の登山道以外は歩かないようにということやいろいろな注意書き、猟場の範囲など記載されている。
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登山道は南面のため、雪の無いところも多い。しかしアイゼンを外すと雪道でのペースが落ちるのでそのまま着けていった。ゴンバ尾根の分岐で小休止。そういえば数年前、一人歩きの女性と会って、「ゴンバ尾根から下りる」と言っていたのを思い出す。この女性とは偶然後立山でも会ってびっくりし、同じコースを抜きつ抜かれつ歩いたので印象深い。
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一休みして次はハナド岩で休憩。ここは歩いてきたタワ尾根はもとより、雲取山から奥多摩駅に続く石尾根、その奥に富士山、奥多摩方面の大岳山、そして上ってきた酉谷山すべてが一望できる。ここは案外知らずに通り過ぎる人が多いかもしれない。
(写真:奥の山並みは石尾根。左、鷹ノ巣山から右端、雲取山まで。その手前の尾根がタワ尾根で、右端がウトウの頭) |
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再び歩き出し、このときまではまだ鳥屋戸尾根から下りるつもりでいた。しかしトシちゃんの背中には何やら”手前で下りたいなぁオーラ”が漂っているような気がするのは気の回しすぎか? と、そこへ三ツドッケ(天目山)の取り付きが・・・。すかさず「行って来いよ、一杯水で待っているから」とトシちゃん先制。この前も通過してしまったし、一杯水は何回か通過しているにも関わらず、この三ツドッケのピークはまだ踏んだことが無い。ということで「行ってきま〜す」。トシちゃんは一杯水へ巻いていく。 |
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疲れているのにどうしてこうも登りたがるかな・・・と一人ごちながらゆっくり登っていく。予定外の登頂。それでも三ツドッケ(天目山)山頂に着いて正面に富士山がどーんと目の前に見えたときは、トシちゃんもくればよかったのにと思いつつしばし堪能。登ってきた甲斐があった。素晴らしい。写真に撮ると小さくなって見栄えがしないのが何とも残念。 |
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狭い山頂を後にして下ると登ってくる男性とすれ違った。これでこの日は二人目。バス停に下りるまで出会ったのはそのお二人だけだった。
ひたすらの下りかと思ったら三ツドッケと言われるだけあって何回かアップダウンがある。やっぱりトシちゃん来なくてよかったね〜(笑) 小屋までは思ったより長く感じた。こちら側は雪がまったく無かった。 |
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一杯水の避難小屋前で
小屋に着くとトシちゃんが待っていた。30分くらい前に着いたと言う。ここでお昼にし、時間を見て鳥屋戸尾根に回るのはやめた。 |
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ヨコスズ尾根の下りは落ち葉を踏みしめて
東日原発のバス時間を見るとかなり余裕だが、その分のんびりしてゆっくり下りよう。アイゼンはもう必要なかった。雪の代わりに落ち葉のラッセルだった。
バス停には16時ごろ到着。休み休みだったのでけっこう時間がかかってしまった。16:17発のバスに乗る。 |
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