上信越・戸隠山〜高妻山〜乙妻山
 (とがくしやま1904m〜たかつまやま2352.8m〜おとつまやま2318m)
 スリルとお花と意外性のある楽しくも厳しい山行!

 H13年9月22日〜23日(土日)前夜発
  天気;1日目晴れ、2日目快晴
  Member.2人(夫婦)

 【コ ー ス 】
(〜は歩、休憩時間含む)

一日目(22日)
奥社入口7:00〜随神門7:20〜戸隠奥社7:35-50〜五十間長屋8:45-55〜百間長屋9:00〜蟻ノ戸渡り〜八方睨10:25-?〜昼食11:45-12:43〜九頭龍山12:45〜一不動避難小屋13:50(小屋泊)
(所要時間約6時間50分・・休憩含む)
二日目(23日)
一不動避難小屋6:00〜二釈迦〜三文殊〜四普賢〜五地蔵岳(1998m)〜五地蔵見晴台6:50-55〜六弥勒〜七観音〜八薬師〜九勢至7:30-40〜十阿弥陀〜高妻山(十一?)8:30-9:15〜十二大日〜乙妻山(十三虚空蔵)10:15-30〜高妻山11:30〜七観音12:50-13:05〜一不動避難小屋13:55-14:30〜牧場出入口15:40〜戸隠キャンプ場16:00-15〜キャンプ場バス停16:35〜(散策道)〜奥社入口17:00
(所要時間約11時間・・休憩含む)

【八方睨より高妻山を望む】右
 偶然出会った櫻井正己氏(RCC2):中央と。


一日目(22日)
奥社入口7:00〜随神門7:20〜戸隠奥社7:35-50〜五十間長屋8:45-55〜百間長屋9:00〜蟻ノ戸渡り〜八方睨10:25-?〜昼食11:45-12:43〜九頭龍山12:45〜一不動避難小屋13:50(小屋泊)
(所要時間約6時間50分・・休憩含む)

 今回の戸隠〜高妻山、そして乙妻山へのルートは天気に恵まれ、最高の山行になった。スリルと、思いがけない意外性、そして数々の思いがけないお花に、充実感溢れる大満足の二日間だった。

 日程の都合により、一泊で行けて尚かつ行っていない所を検討し、戸隠山〜高妻山に決めた。迷ったのはコース!気がかりは戸隠山の蟻の戸渡りだった。行けるだろうか?怖いけど通ってみたい!しかし問題は荷物。一泊となると避難小屋なので、人気の山だけに混雑を考え、念のためテント持ちとなる。食料も持たねばならない。前夜発のため、初日は時間を少ない方にしたい。

 悩んだ結果、初日に気になる所は済まそうと、先にその難所を行くことにした。HPなどで情報をチェックし、行けるだろうと判断。

 前夜といっても夕方早めに自宅を出ようと思った。しかし夫が仕事で遅くなり、出発は結局21:30。天気予報で翌日、翌々日の晴れを信じて車を走らせるものの外は雨。韮崎で止んだ雨は長野方面に近づくと再び降っていた。

 深夜到着の奥社入口駐車場で車中泊。公共で無料の駐車場はかなり広い。入口にきれいな水洗トイレもあり、中にはペーパーも取り付けられていた。

 翌朝、6時半頃起床。太陽の光が明るい。ホッとして支度。朝食を済ませ、7時出発。

 随神門を経てそのまままっすぐ奥社まで続く参道は両脇が杉並木でとても落ち着いた雰囲気だ。歩いていて気持がよい。奥社で先に登山届けの用紙に記入てから安全祈願と諸々のお参り。お賽銭の割にお願いが多すぎて、安全祈念が心配だと冗談を言いつつ登山道へと進む。

 荷物が重いと言いつつ、初めのうちは順調に普通の登山道を登っていく。多少は急登で、けっして歩きやすくはないが、きわめてノーマルな道だ、今のところ・・・。後からきた3名の登山者に道を譲り、亀の歩みでゆっくりと登っていった。  

左【鎖場、まだまだ序盤戦・・・】

 歩き始めて55分、五十間長屋で少し休憩。そこから百間長屋は5分とかからない所にあった。そのまま通過する。そして鎖場が現れた。まあ、良くある普通の鎖場だ。それほど難しくもない。ところが、次々と、これでもか、これでもか、と新手の鎖場が現れてくる。しかも片側が切り立っていたり、垂直の壁面だったり、横這いであったりと、変化に富んでいる。先に進んでいる夫のザックは少し横に広がっているため、一ヶ所通過に難儀だったところがあった。左に鎖があって、それに掴まりながらよじ登るのだが段差がある上にザックが引っかかって思うように登れない。右側は切り落ちている。そこで足を滑らせて鎖にぶら下がったときにはヒヤリとした。なんとか体勢を元に戻し、体をねじ込むように再度よじ登り、やっとその場をクリア。

 後に軽装の単独者がいたので私の前に先に行ってもらった。その人は身軽にひょいと登っていった。その後私がよじ登った。ところが今度はザックの脇につけてあるストックが鎖に引っかかってしまった。どうにも身動きが出来ない。夫は、私との間に単独者が入ったためにカーブした少し先の場所まで行っていたため、声はすれども姿が見えず、この窮状を伝えることが出来ない。自分で何とかしなくてはと、しゃがみ込んだままどうにか鎖を外した。ホッとして、次の鎖場へ。
左【蟻の戸渡り、早々にまたがる夫】

 緊張の連続で、休憩したいと思ったが、そういう場所もないままに進んで、やっと蟻の戸渡りの所まで着いた。見渡したところ、距離にして20メートルくらいだろうか。先行者3人グループ二組が、それぞれにまたがって難渋している。先頭パーティはザイルを出してしっかり確保しているのが見えた。その光景にワァーと思わず声が出る。疲れた体を休めながら、しばらくその様子を見ていた。私たちの後からきた若い女性と男性の二人組に先に行ってもらった。すると、大の男が四つん這いに進む中で、その若者は歩いて進んでいく。しかも、先行者を待ちながら切り立った絶壁の下方をのぞき込んでいるのだ。すごい度胸だ。でもそういった人たちを見ていたお陰で私は気持が落ち着いた。

 先行者達の様子を見ながら、順番待ちをしていた私たちも進むことにした。夫は怖え〜と言いながら、早々にしゃがみ込んでいる。怖々とゆっくり進むものだから、ザックに体が振られるのではないかと、そればかりが気がかりだった。私はその後を立ったまま進む。それをみた夫がちょっと悔しがるが、もうその細い場所で立ち上がることも出来ない。少しずつ進んでやっと、一旦くぼんだところへ下りた。そこから左に伝っていく細い足場があったが、身も荷も重い夫では、足場が心配だ。右側に鎖が付いている捲きルートがあったので、そちらに行くことにする。その方が安全だ。
左【蟻の戸渡り(八方睨より)】

 そのあとは少し普通の登山道になり、もう一度最後の鎖場を登るとそこは八方睨だった。よじ登ってやっとホッとした。改めて振り返り、安心感から、すっと気持が楽になった。

 八方睨からの展望はよかった。前方に明日予定している高妻山が割合近くに見える。山座同定盤によると高妻山と乙妻山の間に雨飾山が見えるようだが雲がかかって見えなかった。遠望がいくらかぼやけていたが、北アルプス方面も望める。富士山も見られるようだが、この日は見えなかった。
左【櫻井氏サイン】

 山頂で山座同定をしながら側にいた人にいろいろと尋ねたり話したりしていたのだが、その人は実は昔エベレストに登ったことがあり、十指に入った有名なクライマー櫻井正己氏だということだった。今はガイドとして活躍されているそうで、この日もガイドでお二人を伴っていた。そのお二人が、いろいろと話してくれる傍ら、櫻井氏は控えめにヤマケイの来月号に原稿が載ると、言われた。中年ハイカーの私には想像もつかないくらい凄い人なのだろうけれど、悲しいかなその凄さがイマイチよく分からなかった。しかし、後から知り合いに尋ねると、RCC2のクライマーと言えば、とっても凄い、最前線のバリバリメンバーなのだそうだ。

 若い二人は西岳方面へと進み、他の人たちは全員一不動避難小屋経由で日帰りだという。小屋泊まり予定の私たちは皆を見送った後、もう少しゆっくりと展望を楽しんでから、後に続いた。その頃になって、蟻の戸渡りに二人連れの姿が見えた。

 戸隠山のピークは目立たない場所にあった。そのまま通過。この山は意外にもお花が多かった。リンドウがいっぱい咲いており、アキノキリンソウやマツムシソウ、ウメバチソウ、タムラソウ、ヤマハハコなどもあった。トリカブトはほとんど終わっているようで、少しだけ見かけた。難所を通過して、気楽に歩いていたのだが、小さなアップダウンに夫がまたも音をあげ始めた。

 九頭龍山のちょっと手前の木陰で昼食をとりながら休憩。目の前に、歩いてきた蟻の戸渡りが見える。だんだんとガスが出てきて、肌寒く感じられてきた。しばらくしてご夫婦が通過していった。私たちがその後出発して間もなくその人達に追いついた。キノコを採っているところで、少し話をした。木になるキノコで食べられないのはツキヨタケとニガクリタケくらいだと言う。でも私には怖くてなかなか採る勇気がない。

 ぬかるんだ登山道でのんびり歩いていると、そのご夫婦が来たので先に行ってもらう。彼らは一度下山して、明日又高妻山に登ってくると言う。それも大変だ。

 もうそろそろ小屋に着くかなと話していた途端、目の前に小屋が現れ、びっくり。小屋に入ると空きがあったので、入れてもらい、テントでなく、小屋泊となった。

 時間が早いため、お茶を飲んだり周りの人たちと話したりして時間をつぶしていた。だんだんと小屋の中の人数も増え、外のテントも大小、4〜5張りくらいになった。早めに夕食の準備を始め、生肉、生野菜入りのすき焼きを作り始めると、周囲の羨望の的?その上ババロアなど作ったものだから、驚いているようだった。「一泊だから贅沢に持ってきたけれど、もし蟻の戸渡りで落っこちていたら、笑いものだわね」と、思わずつぶやいてしまった。今だから笑えるけれど・・・(^-^;;

 夕食を終えてのんびりしていると一人の年輩の女性が入ってきた。下山予定だったが、具合が悪くなって下りれなくなったから、間に入れてくださいという。15人は入れる小屋で、最終的には13名になった。でもシュラフは持っていない。レスキューシートと合羽とシュラフカバーがあるからと、言っていた。我が家の銀シートを広げて使ったもらい、幸い誰の者か分からないシュラフが一つなぜか隅にあったので、夜中の寒さに途中からそれを使ったようだった。


二日目(23日)
一不動避難小屋6:00〜二釈迦〜三文殊〜四普賢〜五地蔵岳(1998m)〜五地蔵見晴台6:50-55〜六弥勒〜七観音〜八薬師〜九勢至7:30-40〜十阿弥陀〜高妻山(十一?)8:30-9:15〜十二大日〜乙妻山(十三虚空蔵)10:15-30〜高妻山11:30〜七観音12:50-13:05〜一不動避難小屋13:55-14:30〜牧場出入口15:40〜戸隠キャンプ場16:00-15〜キャンプ場バス停16:35〜(散策道)〜奥社入口17:00
(所要時間約11時間・・休憩含む)

 朝5時前に起床。小屋の中のほとんどが高妻山に向かうメンバーで、起きてすぐ出かける人、食べてから出かける人それぞれだった。私たちはしっかりうどんを作って食べた。お隣の昨夜の女性は食べるものは持っていると言いつつ、出す様子もない。体を温めた方が良いだろうと思い、三等分にして分けてあげた。それまでは具合が悪いからすぐに下山すると言っていたが、昨夜の戸隠の話を夫がしていたものだから、食べ終わった途端に、そちらへ行きたくなったから行きますと言い出した。唖然!丁寧にお礼を言われて先に出発して行った。

 私たちは6時頃出発。朝日は見えなかったが、光がやわらかく広がっていた。初めから登りだったが、小屋に殆どの荷物を置いてきているため、昨日ほどのしんどさはない。爽やかな樹林を歩き、一不動から始まる二釈迦、三文殊などの表示を楽しみに進むが、そのいくつかは気づかぬままに通り過ぎてしまった。帰りに再度確認しながら下りてきた。一合目などのようなものかなと思ったが、均等に取り付けられているようでもなく、ピーク毎にあるようでもなかった。何が基準かよく分からない。

 五地蔵岳は少しスペースがあったが、数名のパーティが続いており、展望もそれほどでなかったので通過した。でも数メートル先に行くと、展望場があり、そこは正面に黒姫山や妙高方面が見渡せた。お天気は良さそうだ。雲一つない。5分ほど休んで先に進む。

 お花は戸隠山より少なかったがリンドウは相変わらず多く、シラタマノキも沢山見られた。山頂まで近いようで遠く、アップダウンが多く、ぐるりと回るような感じでなかなかつかないと、あらかじめ情報を得ていたので、それは覚悟していた。数字を見ながら今度は何という文字がつくのかと楽しみながらのぼった。九勢至に来たとき、高妻山が大きく目の前に見えた。そこで、ゆっくり一休み。あともう少しだ・・・と思ったのは大きな誤算だった。

 ここからが意外にもきつかった。登ればすぐ山頂と思ったのは甘く、そのたびに裏切られた。なんという意外性のある山なのだ。しかも緑の山は山頂に近づくに連れて岩稜帯となった。そして十阿弥陀に着いたところの先に山頂は見えた。あともう少し・・・

 山頂で写真を撮ったあと、パンを食べながら周囲を見回す。素晴らしい展望だ。雲一つない青空の下、北アルプスから中央、南、八つ、富士山と全てきれいに見渡せる。今日はどこの山からも一望できただろう。しかし、この高妻山からの展望は最高だ。予定では今回鹿島槍を考えていたのだが、日程的に厳しいのでこちらに変更した。その鹿島槍が目の前に見える。その並びに、今月はじめに観光で行った白馬の麓の風景が見える。そして山脈の北端まで、その先の日本海も。雨飾山、焼山、火打、妙高・・・涙が出そうになるくらい感動的だった。ここに来て良かった!!!

左【乙妻山から高妻山を望む】

 山頂で充分休み、展望に満足して、その先の乙妻山まで足を延ばすことにした。夫は行かないと言っていたが、小屋で一緒だった人に気持をあおられて、行く気になったらしい。でも行くと言っていたその人達は疲れたのか、取りやめて高妻から下山したようだった。乙妻山までは約1時間。繁茂した笹藪で藪こぎ状態!登山道はあるので注意して進めば大丈夫だが大変だった。しかし山頂に立った醍醐味は何とも言えない。先に来ていた二人は既に下山し、山頂は私たちだけのものだった。目の前に大きく妙高、火打、雨飾、そして日本海。高妻山、乙妻山は新潟、長野の県境。この目の前の新潟から北アルプスへの山並みは続いているのだ。

 満足して下山を始めたとき、小屋で一緒だった4人パーティと入れ違いになった。高妻山までもまた1時間。乙妻山へ向かう人は少なかった。高妻山山頂は、人の山だった。少し下った石の上で、見飽きぬ展望を眺めつつ、少し休んで下山にかかった。下り始めても登ってくる人が後をたたず、待つことが多かった。その中に昨日戸隠で会った、キノコ採りのご夫婦がいた。改めて登り直しているので、「ご苦労様」と声をかける。少し話して別れたが、下山後入った温泉でも偶然会って、びっくりした。

 途中一回休んだ後小屋へ下り、荷物を詰め替え、コーヒーを飲んでから下山。また重い荷物を背負って下る。ゆっくり下って15分くらいの所に水場があった。軽量なら10分ほどで下ってこれるだろう。水量はたっぷりある。下るときはこの流れのある中歩くことになるので滑らないよう注意が必要。

 要注意の鎖場があるというのを承知はしていたが、その場所が数カ所あって、驚いた。しかも時々沢を右へ左へと横切る。雨の時は、鉄砲水など気をつけた方が良いと思った。

 下山して牧場に着くと喫茶店と茶店?がある。キャンプ場は広く、賑わっていた。ソフトクリームを買って食べてからバス停の方へ行ってみた。バス停の所から散策路があり、そこから奥社へ歩くことにした。牧場から随神門へ向かう道より近い。駐車場のすぐ側に出る。5時頃到着したが、小屋で一緒だった一組のご夫婦は、かなり後だったので、明るい内に下山できるだろうか、具合が悪かったと言いつつ戸隠に向かった年輩の女性も大丈夫だったろうかと、気になった。

 温泉は戸隠神告げ温泉(中社ゲレンデ駐車場内、tel.026-254-1126)、大人600円。シャンプーリンス、ボディシャンプー付き。食事も出来る。午前9時〜午後9時。