中央アルプス ; 空木岳〜越百山
(うつぎだけ〜こすもやま)

麓の紅葉がまだきれいだった。木曽殿越では熊(多分)を見た。
澄み渡る空気の中、展望は最高。


 H10年11月1日(日)〜2日(月)前夜発 ; Member.2人(夫婦で)

【空木岳山頂で】

 【コ ー ス & レポート】
 (〜は歩、休憩時間含む)

【一日目(1日) 天気;晴】
ケサ沢林道終点駐車場6:05〜四合目7:35〜うさぎ平7:55-8:05〜六合目吊り橋9:05-20〜仙人の泉10:20-25〜八合目11:10-25〜木曽義仲の力水(水場)12:20-25〜木曽殿越(昼食)12:35-13:25〜第一ピーク14:15-30〜空木岳山頂(2864m)15:05〜駒峰ヒュッテ15:20(泊)

 昨年の6月、中央アルプスの山域に初めて足を踏み入れた。その宝剣岳、木曽駒ヶ岳で、その先にある空木岳にいつか行ってみたいと思っていた。また、先月御嶽山と恵那山に登った。好展望の中に含まれる未知の山は再び魅力を感じさせてくれた。折しも山の話題に上がり、今月行く山の選択肢は絞られた。当初のコースは越百山から空木岳へととってみたが、一泊にしたかった事や水場の事を考え、夫の案で逆コースを検討。この方が時間の配分が均等になり、水の補給をしやすく、しかもしっかりした造りの山頂無人小屋の駒峰ヒュッテに無理無く泊まれる事が分かった。即決定。

 林道終点の駐車場には迷いながらも前夜11時頃到着。既に10台以上は停まっていただろうか。

 5時起床、明るくなってから出発。その辺りの紅葉は素晴らしかったが、さすがに2時間の林道歩きは長い。うさぎ平でようやく登山道になり、そこは紅葉の絨毯だった。歓声をあげたのも束の間、長い林道のつけは長い急登の連続だった。六合目の吊り橋の所で二度目の休憩をとる。その辺りではテント場の形跡が残されていた。側には沢の水が有り申し分無い。再び檜やツガの樹林帯を通っていくが、陽射しが柔らかく射し込んで気持ちが良い。途中樹間から御嶽山がきれいに大きく見えた。既に冠雪している。威風堂々とした姿が良い。仙人の泉で咽を潤す。この辺りが七合目だ。

 八合目まではいくぶん傾斜が緩やかに感じられた。空木岳の展望が良いと書かれてはいたが、樹林に遮られ、その姿は垣間見る程度だ。しかし勝手に緑の山を想像していた私は宝剣岳のような岩で出来上がった山らしいと分かって意外な気がした。八合目を過ぎると空木岳の全山容が現れ、それは威圧感があった。雪が少し、斑についている。登山道の途中にある木曽義仲の力水を補給、各2リットルにして木曽殿越にもう一頑張りするが、そこから引き返したい気持ちにさせられる程だった。その上、冷たい風が容赦無く吹き付け、気分は落ち込む。

 立派な木曽殿山荘は既に閉鎖され、トイレまでも使用できなかった。狭く暗い避難小屋で風を避け二人で昼食をとるがあったかいスープがせめてもの慰めだった。しかし自然現象は致し方ない。とはいえ女性にとって八方から見晴しの良いそこはどうにも場所が無い。誰もいないのを見定めて何とかと思ったのも束の間、山頂から延びている目の前の尾根に四つ足の動物が歩いている。急いで小屋の中にいる夫を呼びに行く。「あの歩き方は熊だよ」と夫。わずか1〜1.5K先の遮るものの無い目の前の尾根で彼(彼女?)はゆっくりと歩き回っていた。最悪!

 腰が張ってきたと言う夫の為に水と重い食料を私のザックに移し、ともかく山頂へ。途中追い抜かれた日帰り単独行氏とすれ違い、情報交換。さらに4名のパーティとすれ違う。第1ピーク辺りだろうか、空木岳の北斜面が現れると積雪はさらに多かった。今シーズン初めて雪を踏む。獣の足跡も目についた。しかし厳しく見えた登りもたゆまず歩けば山頂に着く。ことさら嬉しく思えたピークの標識だった。しかし冷たい風の為写真だけ撮って眼下の小屋へ。少しの距離だが積雪でやや時間がとられた。小屋にはまだ誰もいなかった。木曽殿越の避難小屋よりずっとしっかりした造りだった。しかし、ここもトイレは閉鎖されていた。何故だろう?無人とはいえ600円(自己申告だが)払うというシステムは初めてだったが、トイレはあるのだから使えるようにすべきだと思う。結局、総勢8名となった宿泊客のさまよう場所に、キジ場はできていく。(後日談:山小屋のトイレの管理は大変で、シーズンオフの無人小屋は閉鎖するしかないようだ)

【一日目(2日) 天気;晴】
駒峰ヒュッテ6:10〜空木岳山頂6:15-30〜赤梛岳7:30〜南駒ヶ岳8:25-30〜仙涯嶺9:45-10:00〜越百山11:00-40〜越百小屋12:15-30〜水場13:15〜好展望場13:35-14:15〜上のコル14:40〜下のコル14:50〜水場15:00〜沢(林道分岐)15:25〜ケサ沢林道終点駐車場16:15

 8名でゆとりある小屋ではあったが、やはりあまり眠れぬ長い夜だった。四時半過ぎには皆起きだし、朝食の用意を始める。私達以外は皆雪をとってきて使っている。池山尾根から1人と、木曽駒・宝剣から来た5人には北斜面の雪が見えたのだ。私達のコースからはあまり見えなかったので水を持ち上げたのだが、これからは彼等のように雪で代用出来るシーズンになった。もちろん水があればそれに越した事は無い。

 明るくなってから出発。山頂までは凍っているだろうと、ピッケル(夫はストック)を使用。アイゼンは6爪を用意してきたが使わなかった。山頂はやはり風があって冷たかった。雲海の上に、御嶽山が大きくきれいに見える。右手に乗鞍、更に北アルプスがあり、槍の穂先まできれいに見えた。もちろん反対側には南アルプスが連なっている。何と言う幸運。

 一人は池山尾根を下ると言い、5人のパーティは南駒ヶ岳までのピストンで、越百まで行くのは私達だけ。空木を下ると追悼の碑があった。周りに石が積んであったので詳細は読めなかったが御冥福を祈り通過する。一つピークを巻いて着いたのは赤梛岳だった。あれが赤梛岳と思ったのは南駒ヶ岳で、思ったより近かった。南駒山頂の手前で先行していた5人のパーティとすれ違った。私達がピークを踏んだ時は折悪しく、ガスでまったく周りが見えなくなってしまった。しかし見えなかったのはこの時だけ。この後は最後まで展望が良かった。

 南駒ヶ岳から一度かなり下り、登りなおす。鎖が出てくると其処は仙涯嶺の山頂に近い。注意して登れば心配はいらないし、稜線上にはしっかり赤いペンキでマークがつけられている。「うっ」と声がしたかと思ったら夫が岩に掴まってバンザイをしたような格好のまま動きが止まった。「どうしたの」と聞くと「さわるな」と言う。しばし沈黙。顔を歪めながら肩の関節が外れたと言う。これも夫の持病?だ。ときたま外れる時がある。危険な場所でなくて良かった。ともかく無事に仙涯嶺に登ったが、ここは名前の印象が薄い割りには岩、鎖、ガレ場有りで、登り甲斐がある。ここまでくれば越百までは後一息と思ったがこう思う時は案外曲者で、案の定遠く感じた。

 越百山頂では風をよけた所で昼食にした。ドドーンと正面に冠雪した富士山がありその前に南アルプスがずらーっと並んでいる。最高のロケーション。南西方向に見える平たい山は恵那山だろうか、マクドナルド(のマーク)のような山が南木曽岳だろうか。

 寒いのには参ったが、越百小屋(11/3まで営業)の小屋主さんによると当たり前のように頷く。例年だと越百小屋の辺りでも30センチ程は雪が積もっているそうだ。
 寒かった山頂に比べ下る程に暑くなり、重ね着していた4枚の服を順次脱いでいく。上ではそれで汗もかかなかったのに。登山道は枯れ木や生木の裂けたのやらがあって痛々しかった。ここも台風の被害にあったのだろう。上でゆっくり出来なかった分、好展望場という場所でコーヒーを沸かしてしばしゆっくりしたが、山頂にはガスが掛かって展望にはならず残念だった。

 林道に戻れば再び鮮やかな紅葉が目にはいる。人が少なくてこの時期ならではの静かな山歩きが出来て良かった。予定ではこのまま一休みした後帰路に向かう事になっていた。仕方が無い、南木曽岳は近いがこの次にしよう。「南木曽岳には又(次回)来る?」と尋ねる。「・・・・・・・」。ということで、半日コースを登る事になった。天気も良さそうだし、また来るのも大変だし、という事で。

 温泉は妻篭へ向かうR256沿いにある南木曽温泉『木曽路館』。大人一人800円だが広々とした気持ちの良いクアハウスで、高いという気はしない。