北海道:
 伏美岳〜ピパイロ岳〜1967P〜北戸蔦別岳〜
 戸蔦別岳〜幌尻岳(同ルート下山)
(ふしみだけ1792m〜ぴぱいろだけ1916.5m〜1967P〜きたとったべつだけ1912m〜
 とったべつだけ1959m〜ぽろしりだけ2052.4m)
一般的な平取からの沢コースは天候で行動が左右されるため、伏美岳登山口からの
縦走コースにした。天候に恵まれ、展望、お花共に素晴らしいlコース。
人とほとんど会わず静かな山行が楽しめた。

 H17年8月8-11日(月-木)
  天気;快晴(10日だけ濃霧)
  Member.2人(夫婦)

【コ ー ス】(〜は歩、休憩時間含む) 
1日目:自宅5:15出発⇒最寄駅よりバス⇒羽田空港より空路⇒十勝帯広空港よりレンタカー⇒伏美岳登山口

伏美岳登山口12:45〜伏美岳山頂17:00(テント泊)

2日目:伏美岳山頂4:15発〜ピパイロ岳9:15〜1967P12:00-35〜1856P14:20?着(テント泊)

3日目:1856P5:05発〜北戸蔦別岳山頂5:55〜戸蔦別岳山頂6:40-7:26〜幌尻岳山頂9:50-10:15〜七ツ沼カール分岐11:15〜七ツ沼カール(水)11:35-12:05〜七ツ沼カール分岐(戸蔦別岳寄り)12:35〜戸蔦別岳山頂13:18-33〜北戸蔦別岳山頂14:53〜1856P16:00着(テント泊)

4日目:1856P4:16発〜1967P6:00-40〜ピパイロ岳山頂8:36-51〜伏美岳山頂11:58-12:55〜伏美岳登山口15:05着



 8/12-13 ニペソツ山
 8/15 アポイ岳

【幌尻岳(左奥):道のりは遠い・・1967峰より】

【幌尻岳山頂で】

【前置き】
 二年前(H15)北海道にしては珍しく台風(10号)が上陸した。幌尻山には丁度その頃登る予定で北海道に来ていたが、林道や登山道が寸断され、徒渉も危険ということで断念していた。今回はその登り損ねた幌尻山に登頂するのが第一の目的。天候によっては日程やら行動がかなり影響されることを身をもって知ったため、今回は夫の提案(ここ大事!)で伏美岳の方からの縦走を検討。調べてみれば、あの台風の時に、下山できず自衛隊に救助されるツアーがあった一方で、片やこのコースで歩いた人たちがいた。

 縦走となると水の確保と装備の重さが気になる。最初はこの案にあまり気が進まなかった。しかしいろいろ調べてみると、興味の引かれるコースだ。額平川からの一般的なコースでも天候によっては日程が長引く場合があり、そのつもりで食料も日程も予備が必要になる。夫は縦走のほうがいいらしいが、私にすればその夫の持久力が心もとない・・・

 台風のあと振内からの林道は復旧されているが、ゲートが以前より2キロほど手前になり、その分余計に歩くことになる。日帰りは無理と諦める。登るなら幌尻岳山頂だけでなく、少なくとも七ツ沼カールを眺めながら戸蔦別岳をまわりたい。そうなると私たちでは二泊必要だ。荒天を配慮して予備日二日ほど充てると三泊〜四泊分の用意が必要になる。テントも着替えも当然持って行くとなると、縦走も同じようなもの、選択肢になりうる。一番の問題は水と体力か・・・。重いザックと長い縦走は嫌だなぁ〜と思いつつもピパイロ岳や1967ピークの魅力にもとりつかれつつあった。

 天気予報は良さそうだったので沢靴も一応は持った。往路を戻るのは大変だから、稜線から沢へ(またはその逆)の縦走にしたかったが、空港からレンタカーのため、どちらにしても同ルートを戻ることにする。ぎりぎりまで迷ったが、結局稜線を行くことにし、沢靴は車の中に置いていった。

【一日目:8日 登山口〜伏美岳】
 朝家を出て、十勝帯広空港着は9:20。予約のレンタカーに乗り、まずR236を北上。途中の大型スーパーでEPIガスを仕入れ、マックで食事。ついでに給水させてもらってから出発。登山口に向かう間の舗装道で早くもキタキツネと対面。「ようこそ」と言わんばかりに姿勢良く座っていた。ブレーキをかけると近づいてくる。餌を貰い慣れているのか人馴れしているようだ。

 未舗装の林道に入ると砂利石でタイヤが多少滑るようだった。埃が舞い、周囲の緑は申し訳ないくらい真っ白だ。

【伏美岳登山口】

 赤い屋根の伏美岳避難小屋に着くと一人の女性が下山した後らしく、食事の支度をしていた。稜線の水場も七ツ沼カールも水は豊富だという。

 そこは車2台ほど置けるが少し先の登山口に広い駐車場がある。人気のほどがわかるが、この日は車2台しか置いてなかった。

 したくして出発(12:45)。もう少し早い時間に出発できれば水場のあるテン場まで行けるかと思ったが、やはり予定通り伏美岳山頂までになりそうだ。山頂では水がない。翌日の行程も考慮して水は多めに持っていく。今回一生懸命軽量化したのもこのためだった。38リットルザックには既に各14キロ。水は行動用を含め各々7〜8リットル持つ。初日は仕方ないが登り3時間の辛抱だ。しかし・・・

【山頂まであと少し・・両脇はお花いっぱい】

 夫のペースでゆっくり登っていくが、やっぱり辛そうだ。早くも不安・・・

 足元にはイチヤクソウ、ウメバチソウ、ウサギギク、エゾシオガマ、クルマユリ?、ゴゼンタチバナなどが目を楽しませてくれる。

 途中から私が先に行くと9合目の途中で軽装の3人の男性が下りて来た。調査で入っていると言っていたが、何の調査だろう?学生さんかな?などと思いながら詳しく聞くこともなく登っていった。

 9合目で夫を待つが、なかなか来ない。途中で休憩していたという。熊と格闘でなくてよかった・・・

【伏美岳山頂よりピパイロ岳を望む】

 伏美岳山頂に着くと日高の山並みが一望だった。ややガスっていたが、目指す幌尻山も、そこに至る稜線も見えている。

 遠いようでもあり、近いようでもあり。

 山頂に一張り、三角点の少し先に二張りほどのテン場があった。時間的にもう登ってくる人はいないだろうと、山頂にテントを張った。

 休憩しているとひょっこりリス(エゾリス?)がやってきた。

(夕食=ジフィーズのエビカレー、キャベツとソーセージの油炒め)
※芯をくりぬいた半切りのキャベツ約500g持参。唯一の野菜、毎日味を変えて食す。


【二日目:9日 伏美岳〜ピパイロ岳〜1856P】

【チングルマ】
 頑張って七ツ沼まで行こうと早出。夫も元気を回復している。天気は良い。幌尻岳までの稜線がきれいに見える。夜露があるので合羽上下着用。すぐびっしょりになった。

 朝のうちは涼しい。且つ下りなのであまり苦にならない。ハイマツや潅木の根で歩きにくい所があり、足元に気を遣う。

 下のテン場を確認しながら進む。水は充分あるので取りにいかなかった。往復30分とも1時間とも言われているが、下りて行くのは熊が居そうで怖い。

 暑くなったので合羽の上を脱ぎ登りにかかる。と、間もなく夫がばててきた。そして私に「1人で行って来い」と言い出す。まただ!・・・

 登りかなりペースダウン。樹林帯で視界はないが、お花が沢山咲いていてとてもきれいだ。白樺の林も美しい。樹林帯で陽射しが遮られてありがたいが生憎風がない。夫弱音を吐きつつピパイロ岳までは行くという。そしてそのあとまた伏美岳まで1人で戻るという。

 ピパイロ山頂直下で大休止。食欲が無いと言いつつ休んでいるうちにおにぎりを食べられた。見通しの良い場所で冷たい風で少し元気も出てきた。水2.5リットルを私の方に移し、再び登り始める。ここでの夫の提案はこの後戻るから私に振内へ下山せよという。沢靴を持ってきていないし、そういう準備ができていないと言ったら「持参のサンダルをシュリンゲで足にくくりつければいい」という。信じられないことを言う夫だ。水流が強ければどうなるか分からないし、石がゴロゴロしているに違いないのにサンダルでは危険ではないか。

 とりあえずヨロヨロして伏美岳まで1人で戻るのは心配だから、ピパイロ岳直下のテン場でテントを張ろうと提案。翌日もう一泊するのでそこで待つも良し、元気が出たら一緒に山頂を目指すも良し。ところが伏美岳に1人で戻ると言いつつ七ツ沼カールでテント泊したいと言い出す。その上なぜ急いで下山するのだと三泊の計画にも文句を言う。今更言われたって・・・・もう訳分からん!(私は天気の良いうちにサッサと歩いて早くお風呂に入りたいよ・・・)どっちにしろ予備日は設けてあるし、予備食もある。あとは夫の体調と気分でなるようになれ!別行動は危険で良くない。戻ると言うなら幌尻岳はやめて私も下山すると言ってピパイロ岳山頂へ。

【ピパイロ岳より幌尻岳(左奥)を望む】

 ピパイロ岳山頂は展望が良い。360度の眺めだ。涼風に気をよくして、先の気持ち良さそうな稜線を見ながら「ここまで来たら行かなきゃな!」と夫が言い出す。「そうね!」と相槌を打ちつつ(えっ?テントは張らないの?私がもった貴方の水は?そのまま私?・・・またしてもこうなるのね・・・)

 ということで、大休止の後でもあり、写真だけ写して通過。台形のように見えたピパイロ岳だが意外にもアップダウンがありびっくり。

 下るとテン場二張り分あり、その先にも小さいスペースがあった。トイレットペーパーの散らかっているのが目に付いた。汚い。持ち帰って欲しいものだ。

 水場へ下りられるテン場は小さいテントなら2〜3張りだろうか。まだ日が高く暑かった。小さな虫がいっぱい飛んでいたのが気になった。

 夫、テント張る様子ないので先に進む。

【1967Pとその先の稜線】 エゾツツジ:幌尻岳(遠景)と花を眺めながら1967Pを登る


幌尻岳は一番奥の山:1967Pより

 1967Pの登りはお花が一面きれいだった。山の姿も良い。ペースはゆっくりだが写真を撮りながらのんびりと登っていく。山頂からの眺望ももちろん素晴らしい。名のないピークだが、山に登る人には憧れのピークだそうな。ここで大休止。携帯からメール送信できた。

 このあと涼風に励まされ、ゆっくりペースながら順調に歩く。ハイマツの根や岩稜帯で歩きながらの余所見はできないが、お花が多く心が和む。


【北戸蔦別岳(右)戸蔦別岳(左)を経て幌尻岳(中央奥)へ】

 夫の体調が限界なので1856Pでテント泊にする(右写真)。その手前の下りで名古屋から来たという若い単独男性とすれ違った。やはり伏美岳登山口からの往復だと言っていたが、大きなザックで交通手段が自転車だというから驚いた。

 このテン場も水場はないが、広々とした気持ちの良い所だ。草原を避けるからテントはやはり2,3張りといったところだろうか。

 早めにテン場を決めたため、夫の表情にもようやく笑顔が出てきた。そして一言「山のクラブでお前が先輩だと大変だなぁ・・・叱咤、叱咤・・でここまで来たよ・・・」と。いやいや、激励、激励・・・でした。

(夕食=ジフィーズのスパゲティ、キャベツと海藻のサラダ)

【三日目:10日 1856P〜北戸蔦別岳〜戸蔦別岳〜幌尻岳〜七ツ沼カール〜戸蔦別岳〜北戸蔦別岳〜1856P】

【1856pのテン場を出発】

 夜中に目覚めた後眠れなくて明け方寝込んでしまい、寝坊して4時半起床。急いで支度。テントを残し、身軽になって幌尻岳に向かう。残念ながらガスっている。

 今回のメーンイベント、日高の最高峰に登るのだから涼しいくらいがいいかもしれない。天気予報は昼前から晴れると言っていた。山頂で晴れてくれると良いのだけれど・・・

 1856Pを下り、ややトラバース気味に歩いていると通り道の脇の草原が押しつぶされている箇所があった。熊が寝転がったような跡。そこから右手の尾根のハイマツ帯へ新しい踏み跡が続いていた。そして登山道に大きな新しい引っかき傷の跡。思わず周囲を見回し、鈴を鳴らす。

 そこからは笛も吹きながら進んでいった。寝坊していなかったらばったり鉢合わせしていた!なんてこともあったのかな?ゾゾッ!

 ハイマツを掻き分けながらグイグイ強引に北戸蔦別岳へと向かっていく。長ズボンをはいているが、足は痣だらけ、腕は傷だらけだ。虫除けにキンカンをスプレーしようものならウゥッっと我慢の子。沁みる・・・

 北戸蔦別岳山頂にはテン場二張り分があった(水無し)。コワッ!ちょっと怖い場所だ。そこからヌカビラ岳を通って二岐沢の方へ下るコースがある。エスケープルートとしてチェックしていたが、こちらも徒渉あり。見たところ山頂からそちらへ少し下った場所もテン場になりそうだが確認はしていない。西からの風は気持ちよい。暑さに苦手の夫もおかげで快調。

 幌尻山荘分岐までは岩場が続く。山荘の分岐ではルートを誤るケースが多いらしい。登山道が平行して上下にあり、山荘方面は下側で北戸蔦別岳方面へは上の登山道に分岐標示があった。ガスっていたり、足元ばかり眺めていたら見落としてしまうだろう。ツアーガイドさんだけが分かっているような標識では意味がない。戻るとき間違えないよう、よくチェックして戸蔦別岳へと向かった。

【幌尻岳:戸蔦別岳下りで】

 戸蔦別岳山頂で休憩。本来幌尻岳を始めとする周囲の眺めは最高だろうにガスで残念。

 しかし下り始めて間もなくガスが動いて七ツ沼カール、幌尻岳山頂方面も見えてきた。七ツ沼カールは素晴らしいテン場だが、ガスっているとちょっと不気味。しかし帰りには水を得るため、どうにでもこの斜面を下りなければならない。かなり下るため思わずため息。あれほどここでテント泊したいと言っていた夫の表情はやや不安げ。戸蔦別岳の下り斜面はガレているので私はここで初めてストックを出した。

 最初の分岐を通過して次の分岐を確認しながら幌尻岳肩へと進む。肩までの登りはきつかった。ここもハイマツが茂り歩きにくい。ハイマツを通り過ぎるとガレた登山道になり肩は近い。

 肩で休んでいると幌尻岳山頂の方から登山者がやってくるのが見えた。単独二人と4,5人のグループ(ツアーのようだった)。周回して山荘へ戻るのだろう。

【幌尻岳山頂で】

 幌尻岳山頂はさぞや人で溢れているだろうと思っていたら、誰もいなかった。ガスで展望がないが、山頂に立てて満足。幌尻岳の姿は前日ずっと眺めてきたし、それぞれのピークで360度の展望も得られていた(復路でもずっと眺められその姿は今も目に焼きついている)。

 ちょうど登ってきた単独の男性(振内額平川コースから日帰り、バイクで林道をかなり入ってこれたらしい)と写真を撮りあい、パンを食べながらガスの晴れるのを待ったが晴れる様子がない。山の話やテント泊、小屋泊の話をし、互いに小屋泊はあまりしないと話が合う。私が「テント泊は重いですけどね〜」と言うと、「持ってくれる人がいるから楽チンじゃないですか〜」と夫を見る。「えぇ、まぁ・・・」と返事をする。(やっぱ、そう見えますよね・・・・。私のほうが重いなんて思わないですよね・・・。確かにテントを持つのは夫の方ですけど・・・。私はツエルト持っているから「お前1人で行け」なんて言われるわけだし・・・・・。とは口には出さず、ハァ・・・・) 。

 寒くなったので同ルートを戻る。

【1:七ツ沼へ下る】 【2:沼】
【3:水を補給する】 【4:沼から尾根に登り返す】

 水を得るため七ツ沼カールへと下る。幌尻岳側の下りは荒れていて歩きにくい。熊に出会いませんようにと鈴を鳴らし、笛を吹き、周囲を見回しながら下りていった。計画通りあと一泊ならば水は少しでよいが、夫次第であと何泊になることやら・・・と水は多めに2.5リットルのかものはし2本ずつザックに詰めた。

 七ツ沼のテン場はなかなか良かったが、いかにも熊が出没しそうだ。その七ツ沼を横切って行くのも勇気がいった。間の潅木帯を通り抜けて行かねばならない。今まで先を行っていた夫だが、熊の餌食には私がなろう・・・・なんて! 口では冗談で熊さんに献上しますと言っている夫だが、遭遇した場面は想像したくもない。ドキドキしながら先に行く。

 無事通り抜けて沼を回り込み、今度は夫が先になり登山道への登りにかかる。花がいっぱい咲いていてとてもきれいだ。その花に励まされながら登っていく。こちらのほうが登山道は歩きやすかった。しかし稜線に出るまで遠い・・・。

 登山道に戻って休憩していると戸蔦別岳から単独男性が下りてきた。どこかで拝見したような・・と思いつつも思い出せないまま少し話をして別れた。二岐から登って今宵は七ツ沼にテントを張ると言っていた。一人で勇気があるねぇ〜と話しながら戸蔦別岳へと登っていったがその途中で思い出した。あのお顔は北海道に来る前に多分HPで拝見した方だ。6月にSさんと伏美岳から登った人だと思い当たったが、振り返ると既に距離は離れていたので確認はできなかった。しかし、今その人のHPを見たらやはりそうだった。

【幌尻岳を振り返る:戸蔦別岳山頂より】 【北戸蔦別岳:山荘分岐のピークを下った所より】



 同ルートを戻るのは様子が分かっているので気が楽だ。でもテントまでは遠かった。設営済みの我が家は嬉しい。テントにたどり着いて、大の字とまではいかないが、思わず横になって背筋を伸ばす。気持ちいい。

 ところで驚いたことに夫が翌日下山する気になっている。お昼までに伏美岳山頂に着いたら山頂から宿の予約をいれようと言っている。(え〜っ!?ウッソ〜!無理じゃないの〜?・・・という言葉は口には出さず心のうちに留め置く)

 このあと水の煮沸と夕食の用意。
(夕食=ジフィーズのカルビ丼と味噌汁、キャベツの漬物、スモークチーズ)

【四日目:11日 1856P〜1967P〜ピパイロ岳〜伏美岳〜伏美岳登山口】

【朝日に向かって行く先に1967P、ピパイロ岳、伏美岳が並ぶ】

 3時起床。軽く朝食(ラーメン)を済ませ支度してテント撤収。水は行動用と、非常用各1リットルずつ持って、あとは捨てる。軽くなった。

 外はガスひとつ無く良い天気だ。また稜線漫歩を楽しめる。幌尻岳を背に、下山に向け同ルートを歩き出す。東の空に明るい日の出。太陽に向かって気持ちよく歩いていく。同ルートを戻るというのはコースを知っているだけに、またあのアップダウンを繰り返すのかという思いと、安心感が交錯する。どちらかといえばほっとした気持ちが強い。同じアップダウンでも、往きと帰りではこれほど気持ちが違う。

 もう一泊ないし二泊したいと言っていた夫は日が変わっても今日中に下山する気になっている。早くお風呂に入りたいといった私の言葉に共感したのか、熊の恐怖から早く逃れたくなったものか?お昼までに伏美岳は無理でしょうと内心思っていたが、この日の夫は元気が良かった。

【岩場を攀じ登る】 【幌尻岳を振り返る:1967pより】

 夜露で濡れるからこの日も合羽上下を着てハイマツをこぎながら進んでいく。岩場も二回目ともなれば慣れたもの。

 1967Pで大休憩。ここでおにぎりとキャベツの漬物を食べながら山座同定したりメールの送受信をしたり(幌尻岳山頂からは圏外だったのにここからはできる)。せっかく買っておいた20万図を忘れてきたのが残念だったが、昭文社のエアリアマップで凡その同定。かすかに見える大雪の山並みを見ると歩いた時のことを思い出す。特徴あるオプタテシケを見て、思わず嬉しくなる。あの激下りはすごかった。歩いた山を見るのは嬉しい。そして目に付く未知の山々にも心動かされる。なかなか来られない北海道、果たしてこの先また登ることができるかどうか?

 この後台形に見えるピパイロ岳へ。1967Pの下りはお花がとてもきれいだ。往路元気の無かった夫がこの日はその花々に一生懸命カメラを向けている。その花はもう撮ったとは言えなかった。ピークというピークではゆっくり休憩し、山座同定しながら進んでいった。

 ピパイロ岳でもゆっくり360度の展望を楽しむ。この日はその度に、山座同定と思い出話に花が咲く。「いいなぁ〜、行くとか行かないとかいう話しよりよっぽどいいよ〜♪」と思わずポツリ。夫苦笑い!ともかく今年最高の山行だ。往きも帰りも素晴らしい展望を堪能できた。天気が悪ければただ辛いだけかもしれないが、晴れていればこのコースは良い。少しは歩きなれた人しか歩けないコースかもしれないが、お勧めのコースだ。

【ピパイロ岳を後にして正面伏美岳に向かう】 【お花畑にカメラを向ける(シナノキンバイ?)】


 ピパイロ岳を後にして伏美岳に向かう。今までの涼風はいくらか感じられて幸いだった。何しろ夫は暑さに弱い。でも下りではまだお花を写す元気が残っている。

 途中のテン場はトイレットペーパーが散らばって汚いところが多かった。なぜ持ち帰るという処理をしていかないのだろう。

【伏美岳に戻ってきた】

 伏美岳までの遠かったこと。それでも休憩をたっぷり取ったにもかかわらず、コースタイムで山頂に到着。夫の言っていたお昼前には到着してびっくり。可笑しくて何度も吹き出してしまった。

 山頂から糠平館観光ホテルに携帯で予約。8000円、1万円、12000円のどれかと言われ、思わず一番高いのにしてしまった。ご褒美!(トシちゃん、Uターンしてたら1人でテントだったね!)

 山頂ではゆっくりお湯を沸かしてコーヒータイム。今までずっと見えていた日高の山並みは、伏美岳に登頂するやガスでカーテンが下ろされた。名残惜しく姿を見せてくれていたピパイロ岳を最後に見て下山にかかる。伏美岳は自然のままで良い山だと思った。白樺林がとてもきれいだ。登山道の整備はさぞや大変だったことだろう。気持ちよく登らせていただいた。感謝。

 沢に着いたときはほっとした。冷たい水でタオルをかたく絞り、汗を拭く。とても気持ちよかった。そして駐車場へ。ポストの入山ノートに下山と書き入れる。この日はまったく人に出会わなかったが、伏美岳に登った人はいたようだった。前日には同じ川崎のご夫婦?がピパイロ岳まで登ったと記載があり、びっくり。車に乗り、キタキツネに別れを告げて宿へと向かった。

追記:この日北ア、白馬大雪渓で土砂崩れがあり、死亡者1名、行方不明1名、怪我1名とのことだった。ご冥福をお祈りいたします。

ウメバチソウ エゾシオガマ ハクサンチドリ ウコンウツギ ミヤマリンドウ
ウサギギク チシマフウロ? イワブクロ ゴゼンタチバナ チシマギキョウ?
ミヤマアケボノソウ タカネナデシコ ミヤマアズマギク イワギキョウ? エゾコザクラ
ユキバヒゴタイ ミヤマダイコンソウ エゾヒメクワガタ アオノツガザクラ カラマツソウ
エゾゼンテイカ クルマユリ クルマユリ シナノキンバイ?