後立山・五竜岳〜鹿島槍ヶ岳〜爺ヶ岳
 (ごりゅうだけ2814.1m〜かしまやりがたけ2889.1m〜じいがたけ2669.8m)
 テント泊の縦走装備では辛かったが充実感!

 H13年10月6日〜8日(土日月)前夜発
  天気;1日目晴れ、2日目快晴、3日目晴
  Member.2人(夫婦)

 【コ ー ス 】
(〜は歩、休憩時間含む)

一日目(6日)
遠見山麓駅(テレキャビン)=アルプス平8:30〜小遠見山10:05-20〜中遠見10:37〜大遠見11:20-35〜西遠見12:10〜唐松分岐14:00〜五竜山荘14:05(テント泊)
(所要時間約5時間35分・・休憩含む)
二日目(7日)
五竜山荘5:45〜五竜岳7:00-15〜北尾根の頭9:15〜口ノ沢のコル9:40-50〜キレット小屋10:55-11:30〜北峰分岐13:15-20〜北峰13:30-40〜北峰分岐13:45〜鹿島槍ヶ岳(南峰)14:25-45〜布引山15:20-30〜冷池山荘16:15(テント泊)
(所要時間約10時間30分・・休憩含む)
三日目(8日)
冷池山荘5:50〜爺ヶ岳(中央峰)7:05-20〜南峰7:35-50〜種池山荘8:15-45〜ケルン10:15〜扇沢登山口11:00=(タクシーで遠見山麓駅へ¥10000,5人で相乗り)
(所要時間約5時間10分・・休憩含む)

【五竜岳より鹿島槍ヶ岳を望む】右
 右奥には槍ヶ岳がきれいに望めた。


 遠見尾根から五竜岳には今回2回目となる。前回の五竜岳は1998.7/18-20だった。その先は初めてだが、すこしでもルート経験があるというのはいくらか安心感を伴う。幸い、三日間好天に恵まれ、予定通りのコースを進むことが出来た。しかし、テント泊での縦走装備は思ったより負担だった。水は小屋で調達すべきだったかもしれない。小屋泊まりならもっと楽に行けただろう(でも小屋泊まりは二人分で、日程的に重なると経済的負担が馬鹿にならないし・・・)。一番のこだわりは、万が一の装備なのである。余儀なくビバークをせざるを得ないときの備えということだ。・・・出発日に健康診断があったのだが、それはハンデとなったかどうか・・・(バリウム飲んだのは辛かった・・・・ボソリ)

 ただし、今回のコースは指定場所以外のキャンプは禁止されている。時期的に、既に閉鎖されている山小屋もある。今回のコースに限ってはキレット小屋が9/30日で閉鎖されている。他の小屋も期間営業なので、今後行かれる場合は必ず確認された方がよい。

 紅葉の一番きれいだったのは種池山荘から下った所だった。いつもなら、この時期扇沢あたりも紅葉できれいなのだそうだが(タクシーの運転手さんの話)、例年より少し遅れているそうだ。


 【前夜発:5日(金)】

 中央道の工事渋滞が2回あったが、どちらも15分程度で通過。あとは比較的順調だった。豊科ICを下りて、大町方面へと進み、R148から遠見尾根登山口へ向かう時、工事中で迂回路がとられていた。

 五竜とおみスキー場の駐車場に0時半着。レストハウスは鍵がかかっているのでトイレには入れない。予め済ませてから行った方が良い。テレキャビン乗り場のトイレは確認していないので不明だが、朝は入れる。洋式トイレで、ペーパーつき、洗面台もあり、きれいだった。さすがスキー場。


 【一日目:6日(土)】

 予定より少し早く、6時半起床。快晴で、この時は山がくっきりときれいに見えた。支度をして早々にテレキャビンの乗り場へ。既にザックが並んでいた。夏は7時から営業だが、今の時期は8時半からになる。料金は片道840円(大人)。荷物料金は10キロ100円、20キロ200円となっている。2泊だからちょっと贅沢な食材にして、保険に6爪アイゼンも持ってきたり、水を持ったりで、私たちは20キロ200円追加。側に一応秤がおいてあるが、これは自己申告のようだ。 

 この乗り場で待つ間、記憶に残っている女性と出会った。間もなく昨年2月に酉谷山の小屋で一緒だった人だと思い出した。前回同様単独だった。今回はどうやら同じコースということで、途中何回か話ながらの山行となった。こんなこともあるのだと驚いたが、私の名前を憶えていたのにはもっと驚かされた。

 少し早めに稼動したので、アルプス平駅に8:30着。そこからは二人乗りリフトも動いていたが、乗り場まで少し下るし、歩いてもたいした距離ではないのでそのまま歩くことにした。殆どの人はリフトを利用していた。私は重い荷物をリフト上で支えるのも辛いだろうと思ったのだが、後になって夫が「やっぱり、乗りたかった」という。今更もう、知らん。朝の快晴とは変わって、ガスが少し出てきた。

 歩いていると、前回のことを思い出す。あの日は偶然にも広沢氏とニアミスだったことが後から分かったのだが、その広沢氏はその後冬山で遭難死され、今はもういない。

 花はリンドウが少し咲いているくらいだが、紅葉は素晴らしかった。多少鮮やかさに欠けるかなとも思ったが、時期的にまだ早いものか、遅いものか分からない。

 小遠見山は360度の展望で、鹿島槍ヶ岳の眺望が良いというので楽しみにしていたのだが、またしても望めなかったのは残念だった。大遠見もまた同様だったが、好天としても展望は小遠見の方が良いようだ。

 西遠見あたりでまず夫のペースが落ちてきた。休もうとしたが、時間がまだ早いから先に進むという。途中、水1リットル分を私の方に移した。小さなアップダウンがあって、鎖場も現れてくる。鎖に頼らずに登ろうと思えば登れるような場所ではある。そのためか、この鎖場の記憶が残っていない。しかし、今回は私自身もペースが落ち、鎖を頼ってよじ登る。前回はこの辺りで雷鳥を見たのだが、今回は初めてオコジョを見た。まだ茶色いのでまるでリスのようだ。    

 すっとガスの切れ目に五竜山荘と五竜岳が見えてくると、登りも更にきつくなる。後もう少しだと思ってからが長かった。ガスが切れて日があたると暑かったが、尾根に近づくほどに風が冷たくなった。ペースがますます落ちて、休みながら登っていった。

 山荘に着いたのは14時頃。コースタイムよりいくらか早かったのは意外だった。 

 私たちはテント泊(一人500円)だが、山荘は、1畳あたり2〜3人と入口に書いてあった。建物はかなり大きい。水は1リットル100円で売っている。蛇口は外にあり、お金は側に取り付けられている箱に自分で入れるようになっている。トイレは外にあり、きれいだ。テン場は斜面に作られているが、そこそこスペースはある。しかし夕方までにはいっぱいになった。  

 明るい内に夕食の準備を始めた。うどんを作って食べる。その頃になって、周囲の眼下は雲海で囲まれ、とてもきれいだったが、五竜岳山頂もすっきりときれいに見えてきた。前回とまったく同じようなロケーションだ。この前は翌日唐松岳に進んだため、その日の内に五竜山頂のピークを踏んだのだった。空身でも1時間とはいえ大変だった記憶がある。今回は明日、この重装備で登るのかと思うと気持も萎える。何を今更・・・ではあるが。星も見ぬままに6時就寝。「あっ、流れ星・・・」という声を遠くに聞きながら。  


 【二日目:7日(日)】

 朝4時過ぎに起床。既に何人もの人が山頂を目指している。ヘッドライトのラインが山頂へと延びていた。私たちは足下がはっきりしてから進むことにした。少し遅くなったが6時少し前に出発。なぜか荷物が軽くなった気がしない。

 雲海の合間から徐々に陽がのびてくるのを左手に眺めながら山頂へ。空荷の人や若い人、早い人にはどんどん道を譲り、先に行ってもらう。ゆっくりペースで、登っていくが、それでも山頂近くの岩場になると、またしても「こんな所あったっけ、ウッソー」と思いつつ思いっきりよじ登る。

 山頂は混雑していた。そこからは槍ヶ岳がくっきりと見えた。鹿島槍が見た感じではあまりに近かったため、はじめは槍ヶ岳が鹿島槍かと思ってしまい、あんな所まで行くのか、遠いなぁと思ってしまった。ホントにそうだったらえらいこっちゃ・・・。グンと間近に立山、剣岳が見える。迫力満点だ。行きたいなぁとまたしても思ってしまう。来週行こうか、と夫に眼差しを向ける。夫も少し気持が揺らいだようだ、この時は。

 今回は三角点をパスして先に進むことにする。山頂の賑わいを思えば鹿島に進む人はぐっと少なくなる。五竜の下りはガレ場で歩きにくい。滑らないように注意して下りていく。尾根を捲くような感じで登山道は続き、時折岩場を通過する。夏場ならば時々は高山植物を楽しみながら歩けるだろうが、今の時期森林限界を超えた所ではそういった楽しみはない。眼下に紅葉を楽しみながらになる。少し渋い紅葉だと思ったが例年と比べどうなのだろう?

 約1時間で1本とりながら、G4,G5、続いて北尾根の頭を通過し、口ノ沢のコルへ。鞍部で休むのは後が辛いがそこで休憩。日射しも心地よくこの日はほぼ終日天気は良かった。その後も岩場をよじ登ったり下ったりのアップダウンを繰り返し、やっとキレット小屋へ。きれいな小屋だった。しかし9/30で既に閉鎖されており、避難小屋としての入口も開いてないように見受けられた。日陰で昼食をとり、大休止。ここで五竜へ進むご夫婦がいたが、この時間からでは厳しかったのではないだろうか。でも種池から出て、11時過ぎにここキレット小屋だから、朝早く出てきたにしても、はやいペースだ。小屋泊まりのようだったので、ザックは小さかったから、この後も心配ないだろうが、五竜岳が最後に残っているだけに、ちょっと気になった。

 ここから目の前に鹿島槍がきれいに見える。いきなり急登だ。キレット小屋標高2518m、北峰2842m、その標高差324m(南峰2889.1mなのでその標高差は371.1m)を一気の登る。しかもその登りは急で、鎖、梯子が連続している。下を見ないようにして、目の前に直面している危機だけ乗り越えるようにして進んでいった。気持はシャンとしているつもりでも、足が少し震える。冷静に、冷静に・・・

 間に10分ほど休んだが、その時間を入れてもコースタイムより早い時間に北峰の麓にとりついた。そこからは空身で北峰山頂ピストン。お〜、軽い、なんて身軽に登っていけるのだろう。

左【北峰より南峰を望む】

 山頂からぐるりと周りを見渡す。鹿島槍山頂である南峰までは25分とあるが嘘でしょう、と感じる遠さだった。そしてやはり嘘だった。五竜にガスがかかってきた頃ひとまず分岐に戻り、また重たいザックを背負って南峰山頂に進むと40分かかった。空身ならばあるいは25分で行けるのか?

左【鹿島槍ヶ岳(南峰)山頂で】

 鹿島槍山頂、目的の山に辿り着いた感激は大きい。遭難碑はないが、大谷原方面に向かってかつて雪崩で亡くなったという仲間の先達に手を合わせる。そのあとゆっくり温かい紅茶を飲みながら、少し体を休めた。ここまでくれば後は気楽に歩けるコースのはずだ。山頂の満足感を存分に味わう。

 下りは情報通り、整備された歩きやすい登山道だった。先ず思ったのは「足だけで歩けて嬉しい〜」だった。今まではずっと、四輪駆動、三点確保の歩き?だった。このままずっと足だけで歩けるというのが、妙にホッと思えるのだから、いかに今まで緊張していたことか。下る頃になってここもガスが上がってきた。人も反対方向からまだたくさん登ってくる。冷池山荘に宿泊する人がピストンに来ているのだろう。ナップザックの人が多い。

 布引山への登り下りはもう苦には思わなかった。道はいい。後は歩いているだけで小屋に着くはずだ。布引山山頂の標示は布引岳となっていた。山頂では雷鳥がいた。つがいだろうか、二羽、餌をついばんでいた。側に人がいてもまったく警戒心を持たない。人は危害を与えないということを承知している。行く先を見ると、爺ヶ岳が見える。中央峰を真ん中に山の字の形に座している。明日はあの山を通るだけだ。麓の冷池山荘を目指して先に進む。

 布引山から山荘までの標高差は約300m。しかしジグザグに一気に下った後は殆ど平坦な所を歩くだけ。小屋まではもう少しと思った頃、手前のテン場に辿り着いた。ン?小屋がない。テン場を確保して、小屋へと行く。と、先に着いていた人に小屋まで大分距離があると聞かされた。

 下っていき、小屋が見えたときは、又ここを登って戻るのかとがっかりしたものだ。小屋に着くと混雑していた。テン場の申し込みをする。ここも一人500円だった。木札をもらい、それをテントに取り付けておき、夕方それを回収に来るシステムになっている。トイレは小屋内を使うように言われた。夜はここまで来る人もいないだろうに、と思いつつ、トイレに寄っていくと、トイレの数は多く、ペーパー付きできれいだった。手洗い場までついており、ペーパータオルも取り付けられてあった。水は充分残っているので買わなかったが、1リットル150円で、五竜山荘より高い。しかも小屋の人が水を入れてくれる仕組みになっている。 経営は完璧!だと思った。扇沢からのバス時間をメモしてからテン場に戻った。テン場まで8分。こんなに離れているのは初めてだったと思う。

 テン場に戻ると夫がテントを張り終えていた。夕食は麻婆豆腐丼とサラダにみそ汁。食べたら早めに寝ようと思っていたが、暗くなりはじめた6時頃、若いパーティが到着。丁度、隣りにテントを張ったため、9時近くまで元気な明るい声聞こえてきた。まぁ、明日はゆっくり起きればいいかと思っていたが・・・。また、6時半頃にも真っ暗な中、2人テン場に着いたが、遅いから小屋の方に素泊まりにしたようだった。その夜はあまり眠れなかった。


 【三日目:8日(月)】

 眠れないままに朝となり、隣のパーティの目覚ましで時間を見ると3時半だった。そして又明るい声。もう少しゆっくりするつもりだったが、夫も寝付かれないらしく、そのまま起きた。眠れなかったのは昨日の疲れが出ていたのも一因のようだ。体のあちこちがガタガタな感じ。

 五竜では寒かったが、この夜明けは温かかった。天気は崩れるかなと、空を見るとまだ星がきれいに出ていた。案の定朝食はあまり食べられなかった。ゆっくり片づけてから小屋へ寄り、トイレを済ませてから出発した。さすがにザックは軽く感じられた。

左【爺ヶ岳:前日の布引山山頂より】

 この日も天気は良く、眺めは良かった。山の周りの雲海がきれい。目の前には爺ヶ岳の山容がくっきりと見える。しかし足が重い。寝不足な上に低血圧だから朝は駄目なのよとふざけながら歩いていたが、大人数のツアーグループが先行させてくれたときは、急げなかったにもかかわらず、息があがってしまった。やっぱり寝不足は辛い。

 後ろから来る人にどんどん先に行ってもらい、北峰は捲いてゆっくりと爺ヶ岳中央峰へ。ここが爺ヶ岳三角点。この日は下るだけなので、次の南峰共々、のんびりした。どちらも展望がよい。五竜岳は隠れて見えないが、鹿島槍ヶ岳から歩いてきた道のりが見渡せる。眺めていると、満足感、充実感の思いが広がってきた。

 種池山荘までの登山道も整備されており、このルートの登山者がいかに多いかが感じられた。この辺りの高山植物はさぞやきれいだろう。風車状になった沢山のチングルマが風に揺れていた。

 種池山荘の前は大勢の人で混雑していた。あっ、生ビールの幟が・・・ということで1杯900円也お買いあげ〜。なんとジョッキで本物の生ビール。あとは下るだけだからいいかと、二人で分け合った。

 柏原新道の下りは初めのうちは歩きやすかった。2218mを過ぎると、扇沢を囲む斜面が紅葉できれいだった。今回ここが一番きれいだったように思う。何度も眺めては写真を写し、下っていった。このコースも又夏は幾種類もの高山植物が楽しめる。山側の斜面にびっしりとどこまでも続いている。この時はゴゼンタチバナの赤い実が鮮やかだった。 

 登山道にある小さなケルンの側を通ると、フリースが落ちていたと拾い上げている人がいた。その下にはマットらしきものが落ちており、もしや人が落ちたのでは?と大声で呼んでいた。でも人が滑り落ちたような跡はない。何故そこにフリースが?という疑問は残るが、落としたのに気づかずに行ってしまったのかも知れない。

 この日も登ってくる人が多かった。はじめは楽そうに思えたコースだが、石や梯子段などあり、登ってくるのも大変そうだ。下りではたいてい、どこでもそう思ってしまうのだが。

 沢水と車の音が聞こえてくると登山口は近い。着いて、バスの時間にはまだ間があると思っていたところへ登山客を乗せてきたタクシーが来て、帰りに乗っていかないかと声をかけられた。信濃大町駅まで5000円だという。バスは一人1400円だそうだ。テレキャビンの乗り場までだと1万円だという。高いからと断ると相乗りを捜してくれて、ラッキーにも若者3人で丁度5人になった。背負っている縦走装備らしい荷物を見て、夫がもしやとテレキャビンの乗り場に車を置いていないかと尋ねた。まさにビンゴ!一人2000円で駐車場まで戻れることになった。

 息子や娘と同年くらいの子たちと、いろいろ話しながら戻る途中、近くの温泉を知っているということで、駐車場に着いた後、そこに案内して貰った。「十郎の湯」大人500円。シャンプーリンス、ボディシャンプー付き。ドライヤーは有料1回100円。そこで食事もできるようであった。