前日の岩手山は撤退のためお昼には下山していた。山は帰路に合わせて南下の予定だったが、八幡平などからの山頂から眺めた森吉山が気になって、温泉にでも入りながら行ってみようということになった。天気予報を聞きながら、秋田駒ケ岳もよし、温泉だけになってもよし。今回はゆっくりと宿をとって宿泊することにしようと、岩手山の南にまわり、秋田街道を田沢湖方面へと向かった。
その途中、いくつかの観光協会を経て阿仁スキー場近くのペンションを紹介して貰い、予約の電話を入れた。温泉ではなかったが、お風呂に入れてゆっくり出来ればいい。この時点でもうすっかり森吉山に決まっている(笑)。
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田沢湖を通過し、阿仁町に向かうと道路は除雪されているが、民家も畑もまだ雪に覆われているところがありびっくり。今年の大雪を改めて思った。 |
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今宵の宿はHOTEL FUSCH(ホテルフッシュ)。スキーシーズンや花のきれいな時期はきっと賑わうのだろうがこの日はさすがに少ない。私たちを含め3組だった。
そういえば森吉山は花の百名山だそうな。今の時期はそれこそ登山者など来ないのだろう。オーナーさんに尋ねると、案の定首を傾げている。
美味しい料理に舌鼓を打ち、ゆっくり入浴出来て、ビールを飲んで大の字で寝られる・・・あぁ極楽! |
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天気予報は少し雨模様だったが、翌朝は降っていなかった。朝から雨なら止めようと話していたのだが、予定通り行くことに。朝食は皆さんより少し早めの7時にしてもらっていた。
デジカメや携帯の充電を済ませ、テルモスにもお湯を入れてもらった。朝食の残りの焼き立てパンも袋につめて貰って、昨日下見しておいたスキー場の駐車場へ。
上の駐車場に行ってしまったが、下の駐車場の方が登山道には近かった。歩き始めると、その下の方から登っている二人連れが見えた。この二人に、後から思いがけない事で助けられることになる。 |
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振り返って、右(上)は私たちが歩いてきたゴンドラ側。左(下=目の前)はリフト側で、こちらの方が登山道に近い。この時期はスキー場が閉鎖されているのでこのゲレンデの中を歩いてこれる。下山はコチラから下った。 |
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上の写真を写した場所はこのような林道。夏場は車でこの先のブナ帯キャンプ場まで入れる。車なら約10分というが、こうして歩くと約1時間のアルバイト。 |
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ここでハタと気付いたことが・・・・
「トシちゃん、地図を車の中に忘れた〜」
でもずっとこんな林道のようなゲレンデを登っていく。昨夜頭の中にインプットされた地図を頼りに行けるところまで行ってみようか。
「こんなこともあるよな〜」とトシちゃん。
おっ!今日のトシちゃんはすなお〜♪ |
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やがてガスった木立の間にキャンプ場らしき建物が見えてきた。コテージかな? |
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キャンプ場を過ぎてもこの単調な斜面を黙々と登る。夏道も雪がないだけで同じ道を通る。 |
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たまたまガスが切れ、振り返るとこんな感じ。急斜面は帰りシリセードできると喜んでいたのだが・・・ |
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ともかくゴンドラの山頂駅までは道を間違える心配はない。そこで引き返してくることになるだろうと思っていた。
そこへ上から声が聞こえ、スキー(テレマーク?)で下りてくる人がいた。すれ違いに挨拶。若い男女二人連れ。登りで見かけた人だった。森吉山まで行く予定だったが、ゴンドラ山頂駅まで行ったらガスと強風のため、怖いから戻ってきたと言う。
私たちも地図を忘れてきたからそこで戻ってくることになるだろうと話したら、持っていた地形図のコピーを下さった。 |
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近くまで行って、ようやくそこが山頂駅だと気がついた。
風はそれほど強くは無かったが、建物の陰へ。ペンションで貰ったパンと温かい飲み物を飲んで一先ず休憩。ゆっくり休んでいる内にガスが晴れなかったらここから下山しようと思っていた。
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待つ間、戴いた地形図と磁石で方角を確かめ、地形を眺めていると、晴れていれば山頂は近いし、難しくないコースなのにナァ・・・と思える。ただ、緩やかに広がっている箇所があるだけに、ガスっていると難度が一気に上がる。あとは等高線のつんだ右側に寄り過ぎなければ大丈夫だろう。
この山は予定していなかったので、車に置いてきてしまった地図は5万図だけだった。幸い戴いたのが地形図だったので、方位磁石をあてれば方角は分かりやすかった。 |
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「車の中に赤布と竹ざお入っていたのに・・持ってくれば良かったなぁ〜」とトシちゃん。ふと周りを見ると、木の枝がいっぱい落ちている。
「赤テープは持ってきた?」と聞くと、さすがトシちゃん、持っているという。ならば、落ちている木の枝にテープを巻きつけて、竹ざおの代わりにしよう!とさっそく行動。 |
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後ろを振り向きながらガスでも見える位置に挿して行った。幸い風は弱い。
そうして行くと、有り難いことに、道筋のほぼ等間隔に竹ざおが立っていた。しかし次の竹ざおがガスで見えないので中間にもこうして枝をさしていった。
等高線が狭い方向、つまり崖側には雪で埋まりながらもロープが張られてあった。竹ざおには「キケン」と書かれている。 |
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石森に到着。ここは森吉スキー場からのコースと合流している。 |
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地形図とPROTREKで現在地と方角を確認。
古い足跡がいくつもあるのであてにならない。 |
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石森で少し休憩。 |
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頼りは赤テープをつけたこの木切れ(全て落ちていた枝。生木を折っていないので念のため)。
再び歩き出すと、アイゼンをつけた新しい足跡があった。森吉スキー場の方から登ってきた人だろう。ストックの引きずった跡も残っている。
まもなくその主とすれ違った。やはり森吉スキー場から来た人だった。古い踏み跡があったので、それを辿りながら山頂まで行ってきたと言う。避難小屋の先は竹ざおなど無く、持っているストックで跡をつけながら行ってきたそうだ。地元の人かと思ったら東京のご夫婦だった。 |
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避難小屋に着き、ここでも現在地と方角を確認。少し寒くなったので上着を着るが、歩き出すとまた熱くなり、脱いだ。
避難小屋の中には入らなかったが、この小屋の下の方から階段(梯子?)がついて、中に入れるようになっていた。
この先は先ほどのご夫婦が言っていた通り、目印は無かった。新しい足跡が有り難かったがそれでもひとたび雨や風が吹けば消えてしまう。赤テープ付きの枝を挿しながら行った。 |
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雪が無くなった。そろそろ山頂だろう。 |
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山頂に到着。 |
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山頂はガスっていて、もちろん誰もいない。阿仁スキー場やペンションからは携帯が通じなかったが、この山頂からは通じた。
天気が良かったら岩手山も八幡平も、見えただろうに。でも残念だったという気がしない。山頂まで来れただけで満足。雪の森吉山を歩けて嬉しかった。今度いつかお花が沢山咲く時期に来てみたい。その時、またHOTEL FUSHUに泊まってみたいが、森吉スキー場や打当(うっとう)温泉からもいいかな・・ |
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山頂の三角点。
20分ほどゆっくりしてから下山。 |
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無事に下りるための、このテープ付きの小枝がとても役立った。視界は数メートルだったが、見える位置に竹ざおやこの小枝があり、安心感があった。 |
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テープはゴミにならないように回収。 |
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無事避難小屋へ。 |
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石森で一休み。 |
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少し視界が開けた瞬間。
手には赤テープ回収袋・・・ |
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ゴンドラ山頂駅へ。登った時より小屋がはっきり見える。
ここまでくればもう安心。休んで、時折流れるガスの合間に見える景観を楽しもう。 |
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瞬間ガスが晴れて。
森吉山方向を望む(ゴンドラ山頂駅近くより)。 |
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ガスが出ていなければ、分かりやすい山並み。
雨は降っていないけれど雨合羽をはいて、下りは楽チンを決め込む。 |
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そう!シリセード!滑り下りて時間短縮と思ったのに、思ったより湿り気のある雪で気持ちよく滑っていかなかった。残念。
お陰でアイゼンもとうとう使わなかったが、結局歩く羽目になり、熱くなって途中で合羽は脱いでしまった。 |
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ブナ帯キャンプ場のトイレは使えた。しかもペーパーがついていて、きれいだった。
ここで少し雨が降ってきたので傘をさす。もう安心な場所だから良かったと思ったら間もなく止んでしまった。 |
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無事駐車場に到着。 |
今回は予定外の山行で、その上地図を車中に忘れるという失敗をした。もし途中で地形図を貰っていなければ、ゴンドラ山頂駅で引き返していたはず。もし地図を忘れていなくても、昭文社のエアリアマップでは同様に先には進まなかった。というより進めなかっただろう。もちろん、磁石も必需品。無理はいけないし、無事に下山する智恵は大切。山を歩いていれば、天気が良くても、いつどんな状況になるか分からない。今回日帰りのこの山で、貴重な経験ができた。
この後、翌日に軽い山を一座登ってから帰路につく予定だった。渋滞を避けるため、ひとまず関東圏まで行きたかったので一気に栃木へ南下。高速で那須塩原ICで下りたのだが雨。予報も九州と北海道以外はかばかしくなかったので再び東北道に戻り、帰路についたのだった。交代で運転したり、途中PAで仮眠したりして、翌朝6時近くには最寄のICをおりた。
帰宅後は片付けと洗濯、睡眠で一日が過ぎた。ゆっくり休息できて良かったかもしれない。
今回高速での往復の一部を私が運転したが、ほとんどトシちゃんの運転だった。お疲れ様でした。感謝です。 |
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